歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっともっと楽しんでいただくために


お軽の中心にはいつも勘平がいる

 「六段目」のお軽は腰元の心、「七段目」は女房の心で勤める、といいますね。
 「お軽はやむを得ず遊女となりましたけれど、夫の勘平に対する思いがあるから、驚いたり、泣いたり、腹を決めたりできるのだろうと思います。由良之助に身請けを持ち出され、それで勘平にやっと会えると喜びます。ところが、兄の平右衛門から勘平の死を聞かされる。それなら私は死にましょうとなる。常に勘平を中心に、その女房としてのお軽の物語が展開していきます」

 お軽の一途な気持ちが、観客の心にも響きます。
 「塩冶家の腰元のころからずっと勘平を好きで、女房にもなりました。勘平のために遊女に売られても好き。腰元であったり、女房であったり、遊女であったり、それぞれの場で姿は違いますが、貫くのは勘平に対する思い。そこがご覧になった方に共感していただける部分なのかなと思います」

 父の与市兵衛と勘平、両方の死を兄の平右衛門から知らされたお軽は「ととさんは非業な死でもお年の上、勘平さんは三十になるやならずで死ぬるとは」と嘆きます。
 「“お父さんはどうなってもいいのか”と思いますが、これも、それぐらい勘平さんを好きということの表れなのでしょう。『七段目』はやはり、遊女の形だけれど、心は女房でということなのだと思います」

 先ほどもお話にあったように、お軽はとても感情豊かに演じられるお役なのですね。
 「歌舞伎では女性のほうが気持ちの上で能動的に引っ張っていくことが多く、女性が諭してというのは、あまりない。江戸時代は、女性が能動的には生きにくかったのではないでしょうか。できないからこそ、逆にそういったものを皆さんが求め、舞台で俳優が演じるのを見ると気持ちがすっきりしたのではないか、と私は思います」

新橋演舞場 壽 初春大歌舞伎

平成25年1月2日(水)~
26日(土)
公演情報

このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

Adobe Flash Player を取得

平成20年2月歌舞伎座
(C)松竹株式会社

夜の部
『仮名手本忠臣蔵』七段目

大星由良之助 幸四郎
お軽 芝 雀
赤垣源蔵 友右衛門
富森助右衛門 廣太郎
大星力弥 廣 松
鷺坂伴内 男女蔵
矢間重太郎 秀 調
斧九太夫 家 橘
寺岡平右衛門 吉右衛門

戦前の歌舞伎の匂いを求めて

 お軽を初演されたのは昭和59(1984)年7月の国立劇場でした。今の片岡仁左衛門さんの由良之助、坂東三津五郎さんの平右衛門でした。
 「初演は関西風のやり方で、お軽も胴抜きの衣裳でした。手に持つのは懐紙。今回は江戸風で衣裳は紋付の裾模様、手には団扇を持ちます」
 「父(中村雀右衛門)のお軽を、共演するお二人ともよくご存じですから、“お父さんはこうやっていたよ”、というお話をうかがえるかもしれません。いろいろご教授いただき、及びはしないでしょうが、少しでも父の香りを感じていただけるように頑張りたいと思います」

 お軽は、お父様の当り役の一つです。
 「今回はその父の追善狂言です。お軽は父が得意として何度も勤め、手取り足取り指導も受けました。教えてもらっても、なかなかそのとおりにできず、父が業を煮やしていたのを思い出します。お軽の心の有り様を理解して性根、役としての思いを強く自分の中にもっていないといけないと厳しく教えられました」

 お父様のお軽が、芝雀さんの目標になっているのでしょうか。
 「自分ではそういうつもりはないのですが、私は色気がないと言われることがあります。父は情が深いというか、濃密な味わいをもっていましたので、私もそれを身につけることができればと思います」

前のページへ 1 2 3 4 次のページへ