歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



大阪松竹座「二月花形歌舞伎」祇園祭礼信仰記『金閣寺』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 中村歌昇

教えていただいたことは一生の財産

 ――過去には吉右衛門さん、仁左衛門さんの東吉で合わせて3回、四天王に出演されています。

 お二人とも屋体の奥からの「大膳暫く待て」の声が、素晴しく響いていたのが印象に残っております。その芸に少しでも近づければいいなと思います。

 播磨屋のおじさんには動き、視線など何から何まで教えていただいています。東吉のような、すっきりした役のときは、余計な動きを入れずに、しっかりと見て、堂々としていなさいと言われました。教えていただいたことをどれだけできるか。私の東吉がおじさんに似ていると言われたら本望ですが、なかなか簡単にはいきません。せめて近いと言っていただけるようにできればと思います。

 おじさんに教えていただいたことは逐一台本に書きこんでおります。それが私の一生の財産です。

 ――豪華な金閣寺の前に満開の桜の木があり、そこに天下を狙う国崩しの松永大膳、三姫に数えられるお姫様の雪姫、捌き役(さばきやく)の東吉と歌舞伎では典型的な役柄の三人が登場します。

 目で見て楽しめるところが多い芝居です。東吉の衣裳もおしゃれです。最初は黒地に瓢(ひさご、ひょうたん)の模様の裃(かみしも)で現れ、最後は御大将の装いになります。大膳、鬼藤太、正清、本当にさまざまで、形式的にも面白い芝居です。雪姫なんて、ファンタジーの要素もあります。姫なのに絵の名手でもあり、爪先で鼠(ネズミ)の絵を描く。それぞれが大きな役ですので、皆で力を合わせて頑張りたいです。

大阪松竹座「二月花形歌舞伎」

平成29年2月1日(水)~25日(土)

祇園祭礼信仰記『金閣寺』

雪姫 中村  梅 枝
此下東吉後に真柴久吉 中村  歌 昇
慶寿院尼 坂東  新 悟
十河軍平実は佐藤正清 中村  種之助
松永鬼藤太 尾上  右 近
狩野之介直信 中村  壱太郎
松永大膳 中村  又五郎

大膳と渡り合う東吉

 ――東吉はお父様の又五郎さんの大膳と対峙されますね。

 弟(種之助)が正清ですので、最後は大膳、正清、久吉を演じる家族三人で幕を締めることになります。ありがたいことですが、いざ舞台が始まればそれは関係ありません。父であり師匠ですから、正々堂々とぶつかっていきたいと思います。

 東吉は碁の手合いで大膳にも、はっきりとものを言いますし、大膳が井戸に投げた碁笥(ごけ)を樋を用いた工夫ですくいとるところでは、義太夫にのり、「四つの足の真中に、据えたる碁笥は小田春永が、首実検のその形。小田を亡ぼす」と、春永の首を碁笥に例えて表現します。そこはしっかりと見せるようにしたいです。

 ――大膳もいずれなさりたいお役ですか。

 大変なお役ですよね。いつか勤めさせていただきたいと思います。雪姫や慶寿院に対しての行いは非道ですが、それを嫌らしくなく見せる。お客様を飲むような大きさが必要になるのではないでしょうか。

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