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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」『蘭平物狂』
今度の舞台を楽しく見るために

ようこそ歌舞伎へ 尾上松緑

前半の踊りは説得力のあるものに

 ――『蘭平物狂』の蘭平を勤められるのは、これが7回目です。

 騙していたはずの蘭平が、結局はいちばん騙されていた、という芝居です。二重三重の嘘がひっくり返り、実は一つの嘘だったということになります。そのストーリーをわかりやすく見せるように踊りもあります。

 ――お話に出た「物狂い」の踊りが前半の見せ場になります。蘭平は刀を見ると乱心する奇病であると偽っています。その蘭平が、主人の在原行平が刀を抜いたことをきっかけに、狂い出し、さまざまな振りを見せます。

 前半の眼目がこの踊りですので、説得力を持たせて見せなければなりません。初演でお教えをいただいた(十世坂東)三津五郎のお兄さんには、そこを何度もご注意されました。女性の気持ちになって松の木を相方に見立てて踊るところもあります。お客様に、「この人は何をやっているんだろう」と、頭にはてなマークが浮かぶようにお見せし、「この人面白いわね」というところまで持っていけたらと思います。

倭仮名在原系図『蘭平物狂』(やまとがなありわらけいず らんぺいものぐるい)

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平成26年6月歌舞伎座(C)松竹

 在原行平の館に奴の蘭平が、主人の恋する松風に似せたりくとその夫、与茂作を連れて帰ってきました。行平が再会を喜んでいるところへ曲者が逃げたとの知らせ、蘭平の倅の繁蔵が探しに行きますが、蘭平は気が気ではありません。行平は命令にもうわの空の蘭平に怒り、刀を抜きました。すると、蘭平が乱心して踊り出し、刀を納めると正気に戻って今度は詫びるばかり。そこへ、曲者の首を取った繁蔵が戻り、武士に取り立てられたところで、与茂作が父の敵と行平に討ちかかります。行平は蘭平を名代にして与茂作と勝負させますが、探し求める銘刀天国を抜いた与茂作こそ弟の義澄と気づき、蘭平は伴義雄だと名のったうえで、兄弟で父の敵の行平を討とうと誓います。
 ところが、蘭平が大勢の捕手を相手にしていると、行平が妻の水無瀬、与茂作、りくを連れて現れ、すべてはお宝詮議のための偽りだったと明かします。蘭平は我が子愛しさから腹を決め、家の再興を信じて繁蔵の縄にかかるのでした。

 ――その後に与茂作との立ち合いがあります。蘭平は与茂作を実の弟の伴義澄と信じ、自身が伴義雄であると打ち明けます。

 蘭平実は伴義雄のいちばん凛々しいところを出す部分です。ここでは、背筋もすっきり伸ばし、立派な姿を見せます。

一人でできる芝居ではない

 ――初演されたのは平成11(1999)年11月の歌舞伎座でした。

 まだ24歳でした。20年近く前ですので、もう昔のような気がいたします。前回(平成26年6月歌舞伎座)演じたのが蘭平の最後のつもりでしたが、年末に華やかなだし物をと、させていただくことになりました。

 ――後半の見せ場が、肉体を駆使した激しい立廻りです。トンボや梯子乗りなど鮮やかなタテがついています。

 『蘭平物狂』という芝居は、一人でできるものではありません。前回も立廻りなどに参加される名題下の皆さんに「最後だから力を貸してほしい」と集まっていただいたので、「もう一回やることになったので頼む」とお声がけしたら、冗談で「嘘つき」と言われました(笑)。そんなわけで、今回も一門の枠を越えた頼もしい仲間たちが集まってくださいます。

 前回から3年が経ちましたが、次世代にバトンを託すためにも、自分の集大成となる蘭平をお見せしたいと思います。

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