歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「三月大歌舞伎」『於染久松色読販』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 坂東玉三郎

悪婆は本当の悪ではいけない

 ――初演で教わられた国太郎さんはお六については、どんなことをおっしゃっていましたか。

 悪婆は可愛さがなければいけないと言われました。抜けたところがなくてはいけない、可笑しみがないといけないということです。お六にしても旧主の竹川のためにやっているので、根っからの悪ではいけないわけです。

 ――悪婆はだいたい、亭主や恩義を受けた人、好きな人のために悪事を働きますね。立役の実悪のように根っからの悪人ではありません。悪婆に必要なのはどんなことでしょう。(中村)七之助さんに玉三郎さんは、「お染の七役」を教えられていますが、どんなアドバイスをされましたか。

 くねくねしないで、すきっと演じることが必要です。七之助君には、女ではなく、男役だと思ってやりなさい、ただの女だと思ってしまうと悪婆にならないから、と言いました。

 ――線の強さが必要ということですね。

 そこが、女方独特のところじゃないでしょうか。

歌舞伎座「三月大歌舞伎」

平成30年3月3日(土)~27日(火)

『於染久松色読販』
(おそめひさまつうきなのよみうり)

土手のお六 坂東  玉三郎
山家屋清兵衛 中村  錦之助
髪結亀吉 坂東  亀 蔵
庵崎久作 嵐   橘三郎
油屋太郎七 坂東  彦三郎
鬼門の喜兵衛 片岡  仁左衛門

41年ぶりのお六と喜兵衛

 ――仁左衛門さんの喜兵衛とのとり合わせは、昭和52(1977)年7月以来、41年ぶりです。

 久しぶりですね。もう本当に若いときからご一緒ですので、理屈じゃないところがお互いによくわかっていると思います。

 国太郎さんには、喜兵衛とは夫婦役になるということを大事にしていかないといけないと言われました。また歌舞伎役者にとって、亭主役がいる、女房役がいるというのは幸せなことだよ、ともおっしゃいました。その頃はまだ若いから、何を言われてもよくわからなかったけれど、年齢を超してくると、長いこと一緒にこういう芝居をしてきたことが大事なんだということがわかってきますね。

 ――今回はお六だけなさいますが、七役(お染、お六、竹川、久松、お光、芸者小糸、お染母貞昌)をなさる場合は、どのお役が難しいでしょうか。

 意外とお染が難しいんです。することが何もないんですよ。ですが、存在としてお染に見えなければいけないんです。『お染の七役』では、ほとんど綺麗に出ているだけで、『野崎村』のように芝居があるわけではありませんから。

 ――七役の早替りをなさる場合に心がけられるのはどんなところでしょう。

 引っ込むときに慌てないこと、出るときは、颯爽としていることですね。

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