歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「四月大歌舞伎」『絵本合法衢』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 片岡仁左衛門

等身大の役のほうが楽しい

 ――平成4(1992)年、新橋演舞場で『絵本合法衢』を初演された際に、重視されたのはどんなことでしょうか。

 サブタイトルに「立場の太平次」と付くように、太平次にウエイトを置いて、前後をどうするかということですね。

 ――大学之助と太平次。どちらがお好きですか。

 それは太平次ですね。武張った役よりも、等身大の役のほうが演じていて楽しいですね。

 ――再演にあたって気を使われるのはどんな点でしょう。

 以前の舞台の映像を観客の立場になって見て、ここを変えてみたほうがいいのではないかとか、工夫することもあります。役が決まってすぐに見ることもあれば、少しあとで見ることもあります。せりふを覚えることも同じことで、台本をぎりぎりまで本を開く気にならないときも、早くから読むときもあります。自分の体の中で、「いま」という時があります。そうでないときに、いくら見ても、あまり頭に入らないんですよ。

 なので私の場合、台本は夜中に読むことが多いですね。急に思い立って起きて台本を読むことも、たまにあります。

歌舞伎座「四月大歌舞伎」

平成30年4月2日(月)~26日(木)

通し狂言『絵本合法衢』立場の太平次
(えほんがっぽうがつじ)

左枝大学之助/立場の太平次 片岡  仁左衛門
田代屋与兵衛 中村  錦之助
田代屋娘お亀 片岡  孝太郎
孫七 坂東  亀 蔵
太平次女房お道 上村  吉 弥
お米 中村  梅 丸
番頭伝三 片岡  松之助
升法印 澤村  由次郎
関口多九郎 河原崎 権十郎
田代屋後家おりよ 市村  萬次郎
高橋瀬左衛門/高橋弥十郎 坂東  彌十郎
佐五右衛門 市川  團 蔵
うんざりお松/弥十郎妻皐月 中村  時 蔵

南北の悪人、黙阿弥の悪人

 ――台本を読み直されることが大切なわけですね。

 役は手に入ったら、だめなんですよ。そこで芸が止まってしまいます。台本を読み返すと毎回発見があります。ですが、逆に考え過ぎる危険性もあります。ほとんどのお客様は、そのお芝居を初めてご覧になるんだ、ということを頭に入れておかないといけません。

 自分のなかでいくら掘り下げても、それがお客様に伝わらないと意味がありません。

 ――『於染久松浮名読販』『桜姫東文章』『東海道四谷怪談』『杜若艶色紫(かきつばたいろもえどぞめ)』など、『絵本合法衢』以前に鶴屋南北作品での通し上演を経験されたノウハウが、仁左衛門さんにはおありだったのかと存じます。

 それはあったと思います。それが積み重ねです。原作をそのまま上演すれば、大変な長時間になります。どこを削り、どの場面をとり上げるかで随分と芝居が変わります。

 演舞場で私が初演したときからの補綴に、数々の復活上演を経験されてきた奈河彰輔さんがいらしたことが大きかったです。私たちが上演する以前に上演された、前進座さんの公演(昭和53年12月新橋演舞場)や高麗屋さん(現 松本白鸚)の公演(昭和55年4月国立小劇場)の台本も参考にさせていただきました。

 ――南北作品の魅力はどこにありますか。

 泥絵具で描いたような楽しさでしょうか。どろどろしているところです。

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