歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」『弁天娘女男白浪』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 尾上菊五郎

若い人たちと一緒に舞台に立って

 ――弁天小僧を演じられるのは平成25(2013)年4月の歌舞伎座柿葺落興行以来です。平成20(2008)年5月には歌舞伎座で通し上演をされました。そのときの配役は、南郷力丸は今回と同じ左團次さんで、日本駄右衛門は十二世團十郎さん、忠信利平は十世三津五郎さん、赤星十三郎が時蔵さんでした。

 平成20年の通しの「稲瀬川勢揃」のときに、夏雄ちゃん(十二世團十郎)に「10年後にやるときに、誰か欠けたりしていないだろうな」と言ったら、彼は「そんなことあるわけないよ」と答えました。

 その夏雄ちゃんが最初に逝ってしまって、その次が寿(十世三津五郎)です。非常に寂しい思いをしました。今回は十二世團十郎五年祭ということで、駄右衛門を海老蔵君にやってもらいます。松緑君(忠信)、菊之助(赤星)と顏がそろいました。(六世尾上)松助さんがよくやっていた鳶頭には松也君に出てもらいます。

 南郷力丸の左團次さんのように、ずっと一緒に演じ続けてくださる方もいらっしゃいますが、今回はそういうことも意識して配役しました。若い人たちには一緒に舞台に立って感じを覚えてもらえればと思います。

歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」

平成30年5月2日(水)~26日(土)

『弁天娘女男白浪』
(べんてんむすめめおのしらなみ)

弁天小僧菊之助 尾上  菊五郎
忠信利平 尾上  松 緑
赤星十三郎 尾上  菊之助
日本駄右衛門 市川  海老蔵
鳶頭清次 尾上  松 也
浜松屋宗之助 中村  種之助
関戸吾助 大谷  廣 松
丁稚長松 寺嶋  眞 秀
番頭与九郎 市村  橘太郎
岩渕三次 市川  九團次
狼の悪次郎 片岡  市 蔵
木下川八郎 河原崎 権十郎
伊皿子七郎 坂東  秀 調
浜松屋幸兵衛 市川  團 蔵
南郷力丸 市川  左團次
青砥左衛門藤綱 中村  梅 玉

皆が自分で役をふくらませれば

 ――「浜松屋」では、番頭、手代、丁稚など周りの方の仕事も多いですね。菊五郎劇団は、脇の方たちも順調に育ってきているように思います。

 育ってくれればいいんですけれどね。世話物はそういうところが大切です。弁天小僧は番頭に莨盆(たばこぼん)を持ってこさせて煙管を使いますが、あまり近くに持ってこられちゃうと、煙管で盆を引き寄せる弁天の形がうまく決まらない。かといって遠くに置かれ過ぎると、不格好に手を延ばさなければならない。万引きと見せかける緋鹿の子も、ちょうどいい場所に置いてもらうと気持ちがいいんです。

 脇の人たちには、自分で役をふくらませろよ、と厳しく言っています。ふくらませれば、どんどん役が楽しくできるようになります。

 ――菊五郎劇団の先輩方の教えを思い出されることがありますか。

 父(七世尾上梅幸)、(十七世市村)羽左衛門のおじさん、紀尾井町のおじさん(二世尾上松緑)の、「そんな格好をしていたら、だめじゃないか」という声が聞こえてくる気がするときがあるんですよ。衣裳を着ていても、「そんな着方じゃだめだ」とかね。ゾクッとすることがあります。

 「浜松屋」で、後ろで見ていた駄右衛門の紀尾井町のおじさんに、「威勢がない」と言われたことがありました。(形だけでなく)威勢、というのも必要なんです。弁天小僧がぱっと裾をめくり上げてとんと座るのも、慣れてくると手順になりがちです。「いけない」と思いましたね。

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