玉三郎 記者取材会 京都南座特別舞踊公演

平成19年5月「坂東玉三郎特別舞踊公演」記者取材会

 5月京都南座では、「坂東玉三郎特別舞踊公演」が上演されます。

 今回の公演は、歌舞伎の始祖と称される“出雲の阿国”の伝説をもとに描いた『阿国歌舞伎夢華(おくにかぶきゆめのはなやぎ)』と、平成10年に歌舞伎座で初演され、待望の再演となる『蜘蛛の拍子舞(くものひょうしまい)』。
 公演に先立ち、玉三郎を囲んで行われた記者取材会の様子をご紹介します。

坂東玉三郎―――
 南座特別舞踊公演は今回で8回目になります。力の限り踊らせていただきたいと思っております。

 『阿国歌舞伎夢華』は、2年半前に歌舞伎座で、歌舞伎者の2人を出して筋をおわせ起承転結をしっかりとさせるように改曲して上演いたしました。それをそのまま持って行きます。花見踊りの曲の一部を入れたりして、なるべく華やかになるようにしたいと思っています。

 『蜘蛛の拍子舞』の“拍子舞”って、唄をうたいながら踊ることを言うんです。ですから、そこが、いわゆる眼目。
 “拍子舞”とつく演目は、あまりたくさんは無いのですが、この『蜘蛛の拍子舞』は本当に良くできています。初演の時は、合狂言を腰元でしましたが、今度は従者の男でやろうと思っています。

阿国を演じられるとき、一番思う事は―――

平成19年5月「坂東玉三郎特別舞踊公演」記者取材会

 “女性でありながら演じる”という事でしょうね。
 ここでの阿国は、京都で念仏踊りを踊って出世して、その後人気が落ちて、三年間くらい姿を隠した後、もう一度大人になって返り咲いてきた頃の話なんです。

 ですから、がむしゃらな時代をエネルギーで生き抜いてきた女というよりも、もう少し大人になって洗練され、思い出というものを考えられるような女性です。
 昔の事や名古屋山三の事を懐かしんで、儚い・寂しいと思うけれど、自分の弟子たちの顔を見て、やっぱり踊っていかなきゃいけないんだ、というところで幕が切れます。

『阿国』に『蜘蛛の拍子舞』を合せたのは―――

 いつか『蜘蛛の拍子舞』を南座で、と思っていたんですけど、『阿国歌舞伎夢華』のあとの流れとして、とても良い組み合わせだと思っています。

蜘蛛の精のように、おどろおどろしいものをやるのは楽しいですか?―――

 楽しいですよ、そりゃ。楽しくなかったらやりません(笑)
 やっぱりそういう落差をみていただく面白さとか、それは歌舞伎、それこそ芸能の根本でしょうね。
 思わぬ展開があったりとか、自分とかけ離れたものになったりとか。登場した時と全然違うものになったりするのは、芸能の根本的な楽しみですよね。

盛大に千筋の糸は撒きますか?―――

撒きます(笑)。

南座の印象、これからの公演について―――

平成19年5月「坂東玉三郎特別舞踊公演」記者取材会

 今までの舞踊公演、そして去年は幸いな事に『アマテラス』をやらせていただいたし、これからはお芝居もやりたいと思っています。
 劇場の大きさもとても良く、まとまりのある一座で幕を開けれられますし…それは、舞踊公演なり、南座なりを観に来てくださるお客様があってのことだと思うけれども、自由な事をさせていただいても許してもらえる…本当に演劇的な時間を過ごすことができます。

 でも、南座で『アマテラス』みたいなものをやらせていただけるなんて、10年前だったら考えられなかったですよね。この舞踊公演が大入りになっているおかげですし、お客様のありがたさを感じます。
 今までは2週間くらいの公演でしたが、これからは1ヶ月くらいできるようにしていきたいと思っています。

ご自分の舞台について―――

 いい意味で、日常性を忘れられる時間でありたいと思っています。
 しつらえがちゃんとしていて、幕が開いている時は、日常を忘れられる時間でなければいけないんじゃないかなって僕は思うんです。
 そうして、幕が閉まって帰るときに、“なんていう時間だったんだろう・・・”と思い出していただけるように。

 その時々に、笑ったり怒ったりするということだけじゃなくて、もちろん喜怒哀楽を享受するということも大事だけれど、時間が止まっているっていうか…そういう時間の中で、幕が閉まって帰った時、説明のつかないような良い時間でありたいと思っています。

 玉三郎・笑三郎・猿弥・段治郎・春猿・薪車らによる優美な世界。
5月京都南座「坂東玉三郎特別舞踊公演」を是非ご期待ください。

玉三郎

2007/04/14