玉三郎がコマンドゥール章受章を語る

坂東玉三郎

 パリ シャトレ劇場「坂東玉三郎 巴里特別公演」を大盛況のうちに終え、帰国したばかりの坂東玉三郎が、滞仏中に授与されたフランス芸術文化勲章最高章「コマンドゥール」の受章について、記者の質問に答えました。

 ――受章の知らせはいつ?
 公演中の2月14日の午後か夜でした。シュバリエ(※同じくフランスの芸術文化勲章。玉三郎は1991年受章)のときは割とやわらかくて、あちらから持ってきてくださったんですけれど、今回は授章式が行われるというので、19日にパレ・ロワイヤルにうかがいました。

 (フィリペティ)文化大臣のスピーチがあり、私が御礼を述べて30分ぐらい歓談をするという、フランスらしい、非常に簡潔な式典でした。大臣には「フランスを自分の国だと思って、しょっちゅう来てほしい」と言っていただきました。

 ――受章の第一報を聞いての感想は。
 もちろんうれしく思いましたけれど、飛び上がるというようなことではありませんでした。私は、若い頃から大きな不幸があったときでも、大きな喜びでも、感情的にならずに受け止めなければいけないと自分に言い聞かせてきましたので。

 今回の受章は、フランス公演の功績とこれまでの多様な芸術家との交流に対してという理由を挙げていただきましたが、私が思うには、「私だから」ではなく、印象派の時代から続いてきた日本文化とパリ芸術との交流の流れの中にあることではないかと思うのです。

 今回の公演で地唄舞が非常に歓迎されたのも、浮世絵でご覧になってきたものを、実際の人間が踊っているという感慨があった上でのことではないかと感じました。

 ――京都賞、重要無形文化財各個認定(人間国宝)、そしてコマンドゥール。続けて大きな栄誉を受けられたことについて。
 的確に、自分を見間違えないように活動していきたい、という気持ちを新たにいたしました。このような肩書きをいただきますと、率直に物事を言ってくださる方が少なくなるのではと思うのです。

 これまでご注意を言ってくださった方も、何割か控えられるかもしれません。そこで、言われないからいいのだと思っては道を見誤るかもしれません。そうならないよう、自分で承知して修練を続けていかなければと思っておりますが、率直にご注意くださる方がいなくなるのはとても残念なことです。ですから、どうぞ今までどおりお付き合いいただきたいと、お願いしたいと思っております。

2013/02/28