【6月4日初日】春猿出演「新派名作劇場」、初日に向けて

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 左より、松村雄基、波乃久里子、水谷八重子、市川春猿

 

 6月4日(木)から三越劇場で始まる「新派名作劇場」に出演する水谷八重子、波乃久里子、松村雄基、市川春猿が、開幕に向けての思いを語りました。

 花柳章太郎没後50年の今年、6月には花柳が初演した『十三夜』と『残菊物語』2作品が上演されます。『十三夜』では花柳の演じた原田せきに波乃、相手役に松村。『残菊物語』では、22年ぶりにお徳を演じる水谷を相手に、花柳が勤めた尾上菊之助役に春猿が初役で挑みます。

水谷八重子

人間味のある『残菊物語』に
 先日、その花柳が主演した溝口健二監督の映画版をあらためて見たという水谷は、「出来が素晴しすぎてカルチャーショックを受けてしまいました。母(初代水谷八重子)が最後に勤めたお徳よりも私のほうが年上になってしまって(笑)、今は怖くて足がすくんでいます。なんとか人間的に温かみのある、生活感あふれる『残菊物語』を春猿さんとつくっていきたい」と、気持ちも新たに取り組む姿勢を見せました。

 以前から、花柳が着用した衣裳の素晴らしさに魅了されていたという春猿は、「花柳先生はあまりに素敵な方ですので、真似てできるようなものではありません。自分ができることを精一杯やるだけです」と、意欲を見せ、「今回は歌舞伎俳優の役なので、歌舞伎俳優の自分ができないんじゃ困ると言われないように勤めます」と謙虚ながらも力強く語りました。

波乃久里子

 『残菊物語』の菊之助は、五世尾上菊五郎の養子ですが、今回は波乃が実の曾祖母に当たる五世菊五郎夫人、お里役を勤めます。「久里子の“里”は、このお里さんからいただいたもの。曾祖母を敬って、ちょっと優しいお里さんでさせていただきます(笑)」と、また一つ、作品に新鮮な味わいが加わりそうです。

ひと言ひと言にこだわり抜く『十三夜』の稽古
 一方の『十三夜』は、演出家から出た「月の光が差すような素敵な芝居に」との課題に向け、「久保田万太郎先生のせりふはフランス語劇のようで、きれいなんです。でも、流れてしまうと心に届かなくなってしまうと、(演出の)尾上墨雪先生から言われ、一つずつ徹底的に稽古をしています。非常に難しいですね」と波乃。

松村雄基

 相手役の松村も、「昨日の稽古では、あなたのせりふの根底はすべてラブコールだ、なのにそれが見えないと言われました。とても厳しい稽古なのですが、エールも送ってくださり、質問にもとてもていねいに答えてくださるのでありがたい。そのご恩をお客様にお返しするつもりで」と、開幕に向けて努力を惜しまず精進することを誓いました。

 初代水谷八重子の舞台姿が素敵すぎて、「すべての動きを書き留めた」と言う波乃ですが、「今回はこれまでと違って、抽象的な構成舞台。斬新になると思います」と明かしました。一方、水谷は「『十三夜』がクリスタルのような、芝居のエッセンスを演じる舞台なので、対して『残菊物語』は人間の肌の匂いみたいなものを出して…」と、2作品が引き立てあうこの公演の魅力とともに、小道具の使い方もリアルにして、「当時の日本人の生活を隅々まで心を配ってお見せしたい」と抱負を述べました。

市川春猿

 「花柳章太郎という名前があまりに大きいから、女方の役者としか思われないかもしれませんが、絵描きでも一流になっていらしたと思うし、花柳先生の衣裳があってはじめて成立する芝居も多い」と水谷が讃え、「チラシの春猿さんの切り接ぎの羽織も先生のデザインなんです。普通、想像もつきませんよね」と波乃も続けます。

 尽きることのない花柳への賛辞の中に見えてきたのは、唯一無二の先人がつくりあげたものを大切にしつつも、さらに新たな作品へと、どこまでも突き進んでいこうとする熱意。四人をはじめとする出演者の熱い気持ちが、隅々までいきわたっていた稽古場での取材会でした。

 三越劇場「新派名作劇場」は、6月4日(木)から26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹三越劇場チケットショップほかにて販売中です。

2015/05/29