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「八月南座超歌舞伎」が南座で開幕

「八月南座超歌舞伎」が南座で開幕

 

 8月2日(金)、南座で、南座新開場記念「八月南座超歌舞伎」の本公演が初日を迎えました。

 本公演の幕開けは、中村蝶紫と澤村國矢による『超歌舞伎のみかた』から始まりました。まずは「超歌舞伎」について、二人の楽しい掛け合いで紹介していきます。目玉は、NTTによる超高臨場感通信技術「Kirari!」の「被写体抽出技術」を、お客様にご体感いただくコーナー。舞台に上がったお客様の姿がスクリーンに登場し、「分身の術」や「変身の術」を見せます。また、かけ声のかけ方や、14色に変色するペンライトの使い方なども紹介し、「皆様が演出の一部となって」公演をつくり上げてと呼びかけ、これから始まる舞台への期待が高まったところで幕となりました。

 

 続いては『お国山三 當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)』。南座公演のために書き下ろされた新作舞踊で、歌舞伎発祥の地である京都で、お国の一座が賑やかに舞う、新開場記念の南座にぴったりの演目です。蝶紫と國矢による男歌舞伎と、女流舞踊家が勤める女歌舞伎の舞に続き、初音ミク演じる出雲のお国が、自らの恋しい気持ちを桜や紅葉になぞらえて舞っていきます。髪型や衣裳など、実際の出雲の阿国を彷彿とさせるいでたちで、二枚扇を操り華麗に舞うお国の美しい姿に、誰の目も釘付けになります。

 

 続いて、ミクが恋する相手、中村獅童演じる名古屋山三が花道から登場。一座の踊り手たちと、毛槍を交えた粋な舞を披露します。締めの総踊りでは、金色の紙吹雪が降りしきるなか、勢いを増した音楽に合わせ、全員が息のそろった見事な舞を見せます。改元を寿ぐ意味を込めた詞章や、現代のテクノロジーを用いてつくられた、まさに“當世流”の歌舞伎踊りを華やかに舞い納めると、客席は拍手と踊るペンライトの光に包まれました。

 

 そしていよいよ、『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』です。大迫力の発端の映像に続き、獅童とミクが裃姿で登場。口上と煽りで観客を物語の世界に誘います。

 

 蝶紫演じる初音の前が守っていたご神木、千本桜の花が邪悪な青龍に奪われてから1000年。ともに桜を守る使命をもつ美玖姫と、獅童演じる佐藤四郎兵衛忠信が再会します。忠信が過去の青龍との戦いを思い出して語る場面では、映像と舞台上の俳優が連動した、見ごたえのある演出が観るものを圧倒します。そこへ襲来した青龍と眷属たち。眷属らを蹴散らしながら、劇場ならではの花道を狐六方で引っ込んでいく忠信に、会場から声援が送られました。一方、美玖姫は國矢演じる青龍の精と対峙します。危機一髪のところで、隈取姿で赤い衣裳に身を包んだ忠信が助けに現れ、待ってましたとばかりに「萬屋」のかけ声がかかります。

 

 忠信と青龍の対決では、客席で、忠信の赤、そして青龍の青の2色のペンライトが盛んに振られるなか、歌舞伎らしく大梯子を使ったり、NTTの技術による「分身の術」や「変身の術」を用いたりと、息もつかせぬ怒涛の立廻りが繰り広げられます。印象的な動きが飛び出すたび、場内から「萬屋!」「紀伊国屋!」「電話屋!」のかけ声が。「ニコニコ超会議」の会場よりもぐっと間近だからこそ味わえる迫力は、南座ならではのものです。

 

 死闘の末、とうとう青龍を打ち破ったものの、千本桜の花はよみがえりません。「数多(あまた)の人の言の葉」と「桜の色の灯火」を寄せてほしいと、必死に呼びかける忠信。かけ声と桜色のペンライトで、観客が力の限り応えます。その力を得た忠信が、美玖姫とともに宙を舞った瞬間、桜吹雪が降り注ぎ、劇場が一気に桜色に染まりました。バーチャルシンガーによる宙乗りは、歌舞伎公演史上、初めてのことです。

 

 劇場に轟くミクの代表曲「千本桜」と獅童のかけ声に、会場の熱気は最高潮に達し、大興奮の渦のなか、幕引きとなりました。エンドロールの映像が流れる間も、会場のペンライトの波や手拍子、かけ声は収まらず、カーテンコールでも、「萬屋!」「初音屋!」などの大向うが飛び交い、興奮冷めやらぬまま幕を閉じました。

 1階西側のロビーでは、今月限定で初音ミクが登場している歌舞伎シャウトを楽しむお客様や、パネル前で写真を撮るお客様の姿も。これから1カ月の間、お客様とともにますます進化していく超歌舞伎を、ぜひ南座でお楽しみください。

 

 南座新開場記念 「八月南座超歌舞伎」は8月2日(金)から26日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。舞台写真は、舞台写真館(スマートフォンはこちら)でお楽しみください。

2019/08/05