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玉三郎が語る、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」

玉三郎が語る、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」
 

 

 12月2日(月)に初日を迎える、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」に出演の坂東玉三郎が、公演に向けての思いを語りました。

玉三郎、梅枝、児太郎、三人の阿古屋

 昨年の歌舞伎座百三十年「十二月大歌舞伎」に引き続き、今年もAプロ、Bプロという形で中村梅枝、中村児太郎と日替わりで『阿古屋』に出演する玉三郎。『阿古屋』の魅力について、源平合戦ものであることはもちろんのこと、「音楽的要素というものが非常に重要。曲が弾ければいいわけではなく、阿古屋を演じる人も音楽的なものをもっていないといけない。それをお客様が楽しむことができるように」と語りました。

 

玉三郎が語る、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」

 今年は、梅枝、児太郎の出演日が増え、「三人で3等分」、阿古屋を勤めます。「せっかくできるようになったのですし、10年、20年先になるよりも、去年よかったから、続けてやってしまった方がいいのではと思い」実現しました。「やはり初演のときは緊張したでしょうし、(今年は)少し余裕をもってできるのでは」と玉三郎。若手二人の阿古屋については、「同じことを教えているんですけど、変わってくるのが不思議。そこが面白い。大変仲良くしていて、お互いに自分自身の課題を話し合っている」と、二人のエピソードも飛び出しました。

 

 劇中で実際に琴、三味線、胡弓を演奏しなければならない阿古屋は、女方屈指の大役といわれます。昨年、梅枝、児太郎の阿古屋が誕生するまでは、20年以上、玉三郎だけがこの役を演じてきました。そんな玉三郎でさえ「1年経つとプレッシャーがある」とのこと。阿古屋として演奏ができるようになるには「10年くらいかかるかな。回数を重ねて力が抜けていき、逆に役にならなきゃいけないという思いが抜けてきたときに」と語ります。今後は他の役者が「自分もできるのではないかと思えるよう、広く開放されていくべき」と話す玉三郎。今年も三人の阿古屋に注目です。

 

玉三郎が語る、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」

グリム童話「白雪姫」を歌舞伎に

 夜の部では、グリム童話を初めて本格的な歌舞伎として上演する、『本朝白雪姫譚話(ほんちょうしらゆきひめものがたり)』に出演します。平成19(2007)年5月に歌舞伎座で行われた俳優祭で上演した『白雪姫』でも、白雪姫役で出演したことがある玉三郎。「題材はグリム童話からもらっているけれども、新しく書きかえていただいて、歌舞伎らしいもの」にしたいと意気込みます。江戸より少し前の時代をイメージとした設定で上演します。

 

 演出について、「音楽劇のように。演奏家が(舞台)後方にいて、紗幕でいつも透けている。長唄も義太夫も筝曲も出ます」と話します。梅枝、児太郎も、それぞれ鏡の精、野分の前として出演。配役に関して、「二人の個性が活きると思います」と答え、「三人で琴を弾く」ことも明かしました。劇中に登場する小人は、子役が演じ、歌も歌うとのこと。その曲を「(オペラ)『魔笛』からとっている」と、驚きのアイデアも飛び出しました。歌舞伎座での上演に向けて様々な構想が浮かんでいる様子の玉三郎。グリム童話のおとぎ話が、歌舞伎の作品としてどのように生まれ変わるのか、期待がふくらみます。

 

お客様に楽しんでいただける作品を

 昼の部Bプロでは、玉三郎が歌舞伎座で1993(平成5)年以来、26年ぶりに『保名』に出演します。『保名』について、「久しぶりにやりますが、好きな作品です。抽象的で、それでいながらものすごく古典的。前後の物語が切れていても、心情で完結している」と、その魅力を語りました。

 

 「役者は将来のことも考えるが、刹那を最大に生きていかないとできない」と真剣な面持ちで語った玉三郎。後身の指導についても、「縁があったら。一緒にいるということが大事。会った人との時間、そのときの関係を大切にするだけです」と、公演、そして後輩との向き合い方を穏やかに話しました。

 歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は12月2日(月)から26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

2019/11/15