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歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

 

 2月2日(日)、歌舞伎座「二月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 昼夜に十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言を上演する今月。昼の部は追善狂言として、歌舞伎三大名作のひとつ『菅原伝授手習鑑』の「加茂堤」「筆法伝授」「道明寺」を上演します。十三世仁左衛門による菅丞相の演技は高く賞されており、今月はそれを受け継いだ当代仁左衛門が6度目となる菅丞相を演じます。また、桜丸の女房八重と立田の前を孝太郎が、苅屋姫を千之助が演じ、松嶋屋親子三代の共演となります。

 

 「加茂堤」は原作の初段にあたる場面。勘九郎演じる桜丸と八重の夫婦が、斎世親王と苅屋姫の恋仲をとり持ちます。和やかな雰囲気に、客席から笑いが起こることも。しかし、そこに現れたのは、菅丞相と対立する藤原時平の家臣、三善清行。この逢瀬を明るみに出し、菅丞相の失脚を狙います。桜丸が、牛車の中を確認しようとする清行を追い払う間に、斎世親王と苅屋姫は逃げていくのでした。

 

 「筆法伝授」の場では、梅玉演じる菅丞相の元家臣、武部源蔵に、菅丞相が筆法を伝授する様が描かれます。菅丞相の御台所である、園生の前を初役で演じるのは秀太郎。宮中から参内するようにと命を受け、菅丞相が出かけようとしたところ、冠が落ちてしまう場面は、後に降りかかる悲劇を暗示する、思わず息をのむ瞬間となりました。

 

 昼の部の最後は、「道明寺」。菅丞相は無実の罪を着せられ、大宰府への流罪となってしまいます。船を待つ間、菅丞相の伯母である、玉三郎演じる覚寿が住む館に留まることとなります。菅丞相の命を狙う陰謀がうごめくなか、菅丞相の木像が奇跡を起こします。菅丞相と養女の苅屋姫が、別れを惜しむ場面は耐え難く、客席からもすすり泣きが聞こえました。

 夜の部は、追善狂言の『八陣守護城』で幕を開けます。十三世仁左衛門の最後の舞台となったのが、『八陣守護城』の佐藤正清。今回は我當が勤めます。正清に仕える斑鳩平次を進之介が演じ、親子の共演にも注目です。幕が上がると朱塗りの大船が存在感を放ち、魁春演じる雛衣が奏でる琴とともに、物語が進みます。毒殺を企む北畠によって毒酒を飲むことになった正清が、その様子を見せず、泰然と構える姿に、武士としての品格を感じさせました。

 

 続くは舞踊『羽衣』。玉三郎が美しい天女を、勘九郎が漁師伯竜を演じます。駿河国の三保松原で、松の枝にかかる羽衣を拾った伯竜に、返してほしいと願う天女。二人は踊りながら、羽衣を巡って、それぞれの思いを表現します。能楽の作品を題材とした幻想的な舞台に、歌舞伎座ならではの華やかな雰囲気が加わったひと幕となりました。

 

 三幕目は落語を題材とした世話物、『人情噺文七元結』。初演では五世菊五郎が勤めた左官長兵衛を、当り役とする菊五郎が勤めます。雀右衛門の女房お兼とは初めての顔合わせ。娘お久の行方がわからず、口論になる長兵衛とお兼のもとに、吉原の角海老にお久がいるとの知らせが入ります。着るものもない博打打ちの長兵衛が、お兼の着物を奪い取り出かける場面には、客席からも笑いが起きました。掛け取りの金子をなくし、身投げをしようとする文七に、ようやく借りることのできた金を与えて助ける場面は、長兵衛の人柄がにじみ出ています。人々の絆が見える人情噺に、感情が揺さぶられる時間となりました。

 

 夜の部の切は追善狂言、『道行故郷の初雪』です。十三世仁左衛門の忠兵衛を相手に、梅川をたびたび勤めた秀太郎。今回は、梅玉が忠兵衛を勤めます。浅葱幕が振り落とされると、雪景色のなかに二人の姿が。公金の封印を切った罪で、大坂から忠兵衛の故郷、新口村まで逃げてきた二人の前に、松緑の万才が現れます。二人の罪を知りつつも、死を選択しないよう、諭した万才。最後は運命を覚悟している二人の切ない幕切れとなりました。

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

 大間にある十三世仁左衛門の祭壇には、懐かしそうに写真を眺めるお客様や、手を合わせるお客様がたくさんいらっしゃいました。二月の歌舞伎座は、歌舞伎稲荷神社や木挽町広場などにも、地口行灯が飾られています。 そちらもぜひご注目ください。

 

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

 歌舞伎座「二月大歌舞伎」は26日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2020/02/05