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芝翫が語る「松竹大歌舞伎」東コース

芝翫が語る「松竹大歌舞伎」東コース

 5月1日(金)から全国19会場で行われる、「松竹大歌舞伎」東コースに出演する中村芝翫が、公演について語りました。

 芝翫が東コースを回るのは、3年前の襲名披露公演以来となります。「今回の『義経千本桜』は橋之助はじめ福之助、歌之助も出る若手の芝居でございます。そのあと、襲名披露では四人でやらせていただいた『連獅子』を、今回は三人でやらせていただく。両方とも、初心者の方にも楽しんでいただける興行だと思っております」と、笑顔でアピールしました。

 

バトンを渡していく

 『四の切』で演じる義経は、平成2(1990)年「関西で歌舞伎を育てる会 第十一回公演」ぶり。その際には「歌舞伎のやり方ではなくて、文楽の豊竹咲太夫さんたちがお出になって、本行通りのやり方でしたので、歌舞伎の『四の切』の義経は、本格的には初めて」だと言います。「位のある、難しいお役。強さのなかにも、柔らかさもなければいけないですし、風格もなければいけない」と、真剣な面持ちで述べました。

 

 『四の切』の指導には菊五郎があたるとのこと。『義経千本桜』は「立役を目指す20歳のときに知盛をやらせていただいて、松緑のおじ様に教えを請いにうかがったのですが、父親がついてきてくれまして。僕もこの間、菊五郎のお兄様のところにお教え願いたいとあがったときに考えたら、(当時の)父が(今の)僕の歳くらいで、橋之助が(当時の)僕の歳くらい。歌舞伎というのは、こうやってバトンを渡していくものなんだと思っております」と、感慨深げに語りました。

 

 襲名の際には親子四人で勤めた『連獅子』を、今回は親獅子の精を芝翫が、仔獅子の精を福之助と歌之助が勤めます。「今回は三人(の獅子)ですので、(十八世)勘三郎の兄と勘九郎さん、七之助さんでやっているやり方で、演じさせていただきます」。

 

芝翫が語る「松竹大歌舞伎」東コース

いつかは息子三人を連れて

 この春、高校を卒業する三男の歌之助について「初めて巡業に参加させていただきます。いつかは息子三人を連れて巡業へ行けたらいいなという思いがあったのですが、時代の流れはこんなにも早い。親子そろってのお目見得がかなうことは、大変うれしく思っております」と、目を細めて話しました。

 

 「やっぱり息子たちを見ていると、歌舞伎に対する姿勢に成長を感じることはありますね」と、父親の顔をのぞかせます。「ぜひともこの巡業は、ご家族そろって親の目から、またお子さんの目から、観ていただけたらうれしい」とにっこり。ご家族での観劇を呼びかけました。

 

3年の時を経て

 襲名から3年経ち、「今、一番ありがたいと思うのは、先輩方です。12月に仁左衛門のお兄様に『七段目』の平右衛門という役をご指導願って、お正月は『奥州安達原』の貞任を吉右衛門のお兄様が毎日見てくださり、いろいろなお話をしてくださいました。今月は毎朝、玉三郎のお兄様と、舞台に上がる前に二人でストレッチをさせていただいて」と、先輩から学びを得ている日常を明かします。

 

 「まだまだ自分自身も足りないですが、教わるだけでなく、歌舞伎界のなかにいて、それを伝えなければいけない自分というのもあります。芝翫として匂いがするかというと、まだまだ足りないものがいっぱいあると思うのですけれど。でも、歌舞伎界のシステムは素敵で、皆さんにそうやって教えていただく。毎日、本当に感謝ですね」と、心境を語りました。

 

 全国各地を回るこの公演について「僕たちは胸を張って、いい芝居を皆さんにお届けしたい」と、宣言しました。「一人でも多くの方に劇場へ足を運んでいただいて、歌舞伎って面白いんだ、楽しいんだと、毎年でも来ることを楽しみにしていただき、さらに、歌舞伎座などの劇場へ行ってみようと思っていただければ」と、期待を込めました。

 「松竹大歌舞伎」東コースは5月1日(金)から26日(火)まで、全国19会場で開催。チケットの詳細は公演情報のお問い合わせでご確認ください。

 

芝翫が語る「松竹大歌舞伎」東コース

 左から、安孫子正松竹株式会社代表取締役副社長、中村芝翫、松本辰明(公社)全国公立文化施設協会専務理事

2020/02/26