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2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』上演

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』左より、中村獅童、初音ミク

 4月24日(土)・25日(日)、千葉県 幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』が上演されました。

 平成28(2016)年より始まった「超歌舞伎 Supported by NTT」。昨年、コロナ禍により上演を見合わせた新作『御伽草紙戀姿絵』が、1年の熟成期間を経て、いよいよ有観客による上演を迎えました。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、客席数を減らして席同士の間隔を広くとり、また、かけ声や大向こうはご遠慮いただく形となった今回の超歌舞伎ですが、会場では拍手とペンライトで、ニコニコ生放送で視聴するニコニコユーザーはコメントで、それぞれ公演を盛り上げます。

 

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『口上』中村獅童

2年ぶりの有観客上演

 客席では、開演前からペンライトを振るお客様の姿も。またニコニコ生放送内では、画面上部に唐破風や格子天井が再現されて映し出され、待ちきれないユーザーのコメントが流れます。会場の熱気が高まるなか、いよいよ2年ぶりに超歌舞伎の幕が開き、裃姿の獅童が登場。「こうして幕張メッセに戻ってくることができて、感無量です」と、感極まった様子で延べる口上に、客席は獅童を応援する赤色のペンライトで、ユーザーは「萬屋」というコメントで応えます。

 

 続いて裃姿の初音ミクが登場すると、会場のペンライトは待ってましたとばかりに、ミクを応援する緑色へ。モニターには「初音屋」の文字が飛び交います。「初めて悪役に挑戦する『御伽草紙戀姿絵』を上演でき、胸がいっぱいです」と述べたミクは、獅童と息の合った挨拶を見せました。

 

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』左より、中村獅童、中村蝶紫、澤村國矢

歌舞伎らしさが色濃く

 新作『御伽草紙戀姿絵』は、歌舞伎でもおなじみの土蜘伝説を題材にした物語。七綾太夫と、源頼光の恋を軸に、日本を魔界にしようと企む女郎蜘蛛の精・山姥茨木婆ら物の怪たちの野望の顛末や、頼光の重臣である平井保昌と盗賊の袴垂保輔兄弟の活躍を描きます。

 

 まずはダイナミックなオープニング映像が、観る者を物語の世界へと誘います。そして発端では、國矢演じる平井保昌と女郎蜘蛛との立廻りや、獅童演じる袴垂保輔と蝶紫演じる山姥茨木婆、そして保昌のだんまりなど、歌舞伎らしいエッセンスが満載で物語が展開していきます。

 

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』左より、中村蝶紫、初音ミク

 場面は変わり、九條の廓。廓遊びに興じる、獅童演じる頼光のお目当ては、ミク演じる傾城七綾太夫。身分違いの二人が互いに深い思いを寄せる様子が描かれます。

 

 その後、頼光から保輔へと早替りした獅童が七綾太夫の前に現れ、平将門息女七綾姫という正体を暴き、仇敵となる頼光との恋を諦めるよう迫ります。拒む七綾太夫を保輔が手にかける、様式美あふれる殺し場を、観客も息をのんで見つめます。山姥茨木婆の妖術により、蜘蛛の魂と合体し化生となってよみがえった七綾太夫。先ほどの可憐な表情とは打って変わって、赤く光る瞳と隈取をあしらった七綾太夫の圧巻の姿に、会場からは大きな拍手があがりました。

 

“超越”していく超歌舞伎

 頼光の前で、胡蝶に化けた七綾太夫が唄いながら舞う拍子舞は、本作のみどころの一つ。一段と磨き抜かれた芸で、たおやかに舞うミクの姿に、誰もがうっとりと見入ります。その正体を見破り追い払ったものの、敵の強大な妖力に頭を抱える保昌。そこへ弟の保輔が現れ、過去の悪事を改心し、化生退治に自分の生き血が効くと明かして命を絶ちます。兄弟の悲しい別れが観る者の涙を誘い、配信画面には熱演に引き込まれたユーザーによる多くのコメントが流れました。

 

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』左より、澤村國矢、初音ミク、中村獅童

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』左より、中村獅童、澤村國矢

 

 大詰には、バーチャルシンガーの鏡音リンと鏡音レンが登場し、大薩摩を披露。みごとな三味線のバチさばきを見せるリンと、「超大薩摩変声機」を片手に語るレン。特別ゲストの登場に、ユーザーも会場も大いに沸きました。

 

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』中村獅童

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』中村獅童

 

 激しいツケが響くなか、蜘蛛の眷属や、NTTの超高臨場感通信技術「Kirari!」の「リアルタイム被写体抽出技術(分身の術)」で分身し襲いかかる山姥茨木婆、そして七綾太夫と死闘を繰り広げる頼光と保昌。頼光が「数多の人の言の葉を、白き炎(ほむら)を」と呼びかけると、画面上には無数のコメントが流れ、また会場では白いペンライトの光がともります。新しく進化した「リアルタイムスタイル変換技術(超越の術)」によって、コメントやペンライトの光をまとい、さらなる力を得た頼光は、とうとう七綾太夫の化生を鎮めるのでした。

 

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』中村獅童

 エンディングで流れ出したのは「ロミオとシンデレラ」。ペンライトが揺れ、興奮が力強い拍手とともに、会場をうねるような勢いで包み込みます。さらに25日(日)の千穐楽のフィナーレでは、獅童が、超歌舞伎『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』でおなじみの佐藤忠信の姿で再び登場し、超歌舞伎ファンを喜ばせるサプライズも。「千本桜」の曲に合わせ、ピンクのペンライトがゆらめき、画面上にはコメントの桜吹雪が咲き誇りました。

2年ぶりに幕張メッセで超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』

 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』左より、中村獅童、澤村國矢、中村蝶紫、初音ミク

超歌舞伎を再び南座で

 公演に先立って行われた取材会で、獅童は「超歌舞伎は、歌舞伎作品の配信の先駆け。昨年中止となってからの1年分の思いを、すべてこの舞台にぶつける、という意気込みは、皆並々ならぬものがあります」と語りました。

 

 今回の超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』は、これまでよりもいっそう歌舞伎らしい演出が随所に盛り込まれた作品となっています。9月の南座での上演に向けて、獅童は「南座はまさに歌舞伎の劇場ですから、より歌舞伎らしい演出が増えるのではないでしょうか」と、期待をもたせました。南座 『九月南座超歌舞伎』は、9月3日(金)から26日(日)まで。歌舞伎らしさも、超歌舞伎ならではの楽しさも味わえる公演へ、ぜひお運びください。

 

 

ニコニコネット超歌舞伎2021 超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』タイムシフト視聴はこちら

※ニコニコ動画のプレミアム会員に登録していただくと、公演の様子を5月25日(火)23:59まで視聴可能です

 

 

「超歌舞伎 Supported by NTT」オフィシャルサイト

「ニコニコネット超会議2021」オフィシャルサイト

2021/04/30