吉右衛門、福助 新橋演舞場で意気込み

吉右衛門、福助 新橋演舞場で意気込み

 中村吉右衛門を中心に華やかで充実した顔ぶれによる新橋演舞場「五月大歌舞伎」が2日、初日を迎えました。

 昼の部は、時代物『毛谷村』、舞踊『藤娘』『三社祭』『勢獅子』、世話物『一本刀土俵入』と歌舞伎の様々な魅力が凝縮された舞台。夜の部は鶴屋南北による世話物で、怪談物の傑作『東海道四谷怪談』。吉右衛門が初役で民谷伊右衛門を勤め、さらに福助がお岩を含めた三役に挑む注目の舞台です。初日を前に、吉右衛門、福助が舞台への意気込みを語りました。

中村吉右衛門―――
 『東海道四谷怪談』では、初役で伊右衛門を勤めます。普通の怪談話ですと、だた怖いだけになりがちですが、さすがに鶴屋南北、当時、そのように生きなければならなかった人たちの人間性がとてもよく描かれております。

 伊右衛門は、お金や女性が絡んで、男ならだれでも持っている悪い心が、あるきっかけで花開いてしまう、そんな弱い男だと思います。それに対して、女性は強い(笑)。これはそういうお芝居じゃないでしょうか。お岩さまというのはとても強い人、そう感じます。

中村福助―――
 『四谷怪談』の時代の世相はとても今の世相に似ています。自分だけが良ければいい、そんな生き方をしている人が多くて、みんなが段々と食い違ってきてしまいます。そうならないように、恋人同士、ご夫婦で、お二人の間のことをもう一度考え直す機会として、ぜひご覧になってみて下さい。

 三役を勤めますが、早替りなども先輩達が練り上げてきたものです。大叔父の歌右衛門も勤めてきた役、一役一役の気持ちを吉右衛門さんにも教わりながら、がんばって勤めたいと思っています。


『東海道四谷怪談』は、新橋演舞場で59年ぶりの上演ですが―――

吉右衛門―――
 新橋演舞場は、『四谷怪談』のようなお芝居にちょうど良い広さで、ここで上演させていただけることをありがたく思っています。

福助―――
 怖いだけではなく、色々な事を考えさせるお芝居です。ストーリーが判りやすく、起承転結がはっきりとしていて、飽きさせないように工夫を凝らしています。


初日はゴールデンウィークですが―――

福助―――
 東京以外の方で、歌舞伎を生で見たことのない方にも、判りやすくて面白いお芝居なのでぜひ観ていただきたいと思っています。昼の部もとても面白いので、昼夜一緒にお楽しみいただくと、ちょうど良いのではないでしょうか(笑)

吉右衛門―――
 私は昼の部では、『一本刀土俵入』で駒形茂兵衛を勤めます。ちょうど相撲の五月場所も始まりますが、横綱になれなかった男の話です。福助さんは『藤娘』を踊りますので、ぜひ昼夜とも、足をお運びいただければと思っています。

新橋演舞場「五月大歌舞伎」は5月2日(金)から26日(月)までの公演。

吉右衛門、福助 新橋演舞場で意気込み

2008/05/02