市川笑三郎が語る『獨道中五十三驛』

 3月、新橋演舞場では弥生花形歌舞伎 『猿之助十八番の内 獨道中五十三驛』が上演されます。作品の見どころを市川笑三郎さんにうかがいました。

笑三郎 猿之助十八番の作品の中で、この『獨道中五十三驛』は一番形を変えている作品だと思います。平成8年7月に歌舞伎座で上演した際には、男の弥次喜多だったところを、今回は私と春猿さんが弥次喜多の女房という"女弥次喜多"で出演いたします。初演の際、猿之助はもともと"女弥次喜多"でやりたかったそうで、その形を東京のお客様にお届けできる事を嬉しく思っています。

 女弥次喜多に変わったことで、さらにお芝居を飛び出して、客席のご婦人がお芝居を見ながらつい口に出してしまうような言葉を、私たちがちょっと現代語を混ぜながら言う事ができるようになりました。私たちをみなさんの代表選手だと思って身近に感じていただければとても嬉しいですし、舞台を観て共感するような言葉があったら、口に出して言って頂いても構わないですよ(笑)。

 このお芝居には思い出があって、私がまだ入門して2年目、17歳~18歳の頃、大阪でこの『獨道中五十三驛』が上演された時、重の井姫の腰元をやらせていただいたのですが、急なことで重の井姫の代役を勤めさせていただいた事がありました。朝、師匠の猿之助が部屋に来られて、「あなた、重の井姫できる?」っておっしゃるので思わず「ハイ!」と・・・幕が開くと、ここにいたら邪魔だろうか?こっちに行けば良いのかって、舞台で右往左往!次の夜も必死で覚え直して(笑)。でも大阪のお客様はその姿を見て逆に私を応援して下さって、今でもとても恩に感じております。

 歌舞伎美人は私たちの年代や、それよりも若い方々もよくご覧になると伺っています。ちょっと前までは、そういう年代の方が歌舞伎をあまりご覧にならない時代もありましたけれど、最近ではそういった方々が「この前、歌舞伎に行ったよ!」というような話をされていて、またそれが自然な流れになっているようにも感じています。ぜひこれからも、応援していただきたく思っています。

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2009/02/27