市川笑也が語る『獨道中五十三驛』

 3月、新橋演舞場では弥生花形歌舞伎 『猿之助十八番の内 獨道中五十三驛』が上演されます。作品の見どころを市川笑也さんにうかがいました。

笑也 重の井姫は自らお姫様の位を捨て、好きな人と一緒になってしまう、昔では考えられないような女性です。そして夫にとても献身的で、男性からみたら理想的な女性ではないでしょうか。足の不自由になった丹波与八郎に願かけをして、満願の日に悪者に殺されかけて滝に身を落とす...そんな女性の健気なところが出せたらいいなと思っております。

 重の井姫が滝に身を投げるところは、とても大変です。八百屋お七のように毛ぶりをしながら、本水の流れる滝をのぼっていきます。師匠の猿之助は、いつも「もっと激しく毛を振って!」とおっしゃいます。ですから、最後滝つぼに飛び込むと、達成感で一杯です(笑)。今回、本水でそのシーンを勤めるのは13年ぶりですが、舞台装置も新しくなって斬新な演出をお見せするので、きっと楽しんでいただけると思います。さらに今回は、荵(しのぶ)の方というお役で大詰めにも登場しますので、そちらもお楽しみいただければと思っています。

 この作品で思い出すのは、初演の頃、稽古がとても大変だった事です。舞台を作り、そこで使う道具を設えながら、歌舞伎座のロビーで稽古をして...初日当日の朝8時までお稽古をしていたこともありました。幕が開いたときは、本当に今日は初日かなって不思議な気分で(笑)。それと、随分前ですが、中日劇場の舞台稽古中に、ぎっくり腰になったこともありました。背景が転換する中、痛みで動けなくなってしまって、一人で舞台に取り残されて...それが本番だったらと思うと今でも冷や汗が出ます。

 私たちの舞台をたくさんの女性の方が観に来てくださいます。本当に、日本の文化は女性の力で支えられているといつも感じています。皆さんがお芝居を観る理由は、やはり、自分の内面を磨きたい、感動したい、自分を高めたいという気持からではないでしょうか。この『獨道中五十三驛』を観て感動して、内側から綺麗になっていただいて、そして、外側は滝からあふれ出るマイナスイオンで潤っていただき、内面外面ともにリフレッシュして新橋演舞場を後にしていただければ、とても嬉しく思います。

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2009/02/17