歌舞伎美人サロン<二、演奏>

歌舞伎美人サロン<二、演奏>

 こちらが大鼓の胴です(上写真、左)。小鼓のものに比べると、随分大きさに違いがあります。初期の歌舞伎では、お能の拍子のように、大鼓が強拍を打ち演奏をリードしていたようですが、その後三味線が入り、曲の演奏というものが歌舞伎に組み込まれてきたことで、見た目も派手な小鼓のほうが次第に囃子方のコンサートマスター的な位置を占めようになったといわれています。

 歌舞伎の舞台には指揮者がいないのに、演奏がぴったりと合っているのはなぜでしょうと質問されることがあります。歌舞伎の場合、役者、立三味線、立鼓という三人のコンサートマスターがいて、その三人がそれぞれの感性を舞台で出し合いながら、演奏中もお互いに意思の疎通をとって舞台を成立させています。その時の空気感や、人と人との関係というのもとても重要な要素です。

 決して俳優の動きを目で追って、その動きに合わせて演奏を続けるということはしません。体の中に音楽のある俳優さんや演奏家の方々と一緒に舞台を創り上げるのはとても楽しい仕事です。

歌舞伎美人サロン<二、演奏>

▲ 休憩時間には、傳左衛門さんの附帳を見せて頂きました。

 鼓は、体験していただいたように、すぐに音も出ないし、手も体も痛いし、なかなか結果が出ない楽器です。材質は桜の木や革を使っていますし、動作も基本的には左手を開放するか閉めるかというシンプルなものなので、自然の影響をとてもよく受けます。僕たち演奏家は自然を相手にしていると言っても良いかもしれません。例えば歌舞伎座の黒御簾や出囃子で演奏をしていると、楽器の音の違いや狂いなどで「あ、今雨が降ってきた」と、外の天気が判ったりするんですよ(笑)。

 鼓やお囃子のお稽古を初めると、最初から音の鳴る人がいたり全く鳴らない人がいたり様々です。どの楽器でもそうですが、鳴らないからといってあきらめずに、今自分が陥っている状況は色々なことを経験するためのプロセスなんだと思ってほしいですね。様々なプロセスを経る事は、自分が一歩ずつ階段を上がっていく事になり、それが後々とても良い経験として残っていきます。

歌舞伎美人サロン<二、演奏>

2009/05/26