中村富十郎さんご逝去

 歌舞伎俳優の、中村富十郎<なかむら・とみじゅうろう、本名・渡邊一=わたなべ・はじめ>さんが、平成23年1月3日、直腸癌のため都内の病院でご逝去されました。享年81歳。謹んでご冥福をお祈りいたします。

<略歴>
 昭和4年6月4日四代目中村富十郎の長男として生まれる。昭和18年8月大阪中座『鏡獅子』胡蝶で四代目坂東鶴之助を襲名して初舞台。昭和30年7月、母である吾妻徳穂の「アヅマカブキ」に参加しヨーロッパ各地で公演する。昭和39年4月歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵 九段目』の大星力弥、『頼朝の死』の畠山重保、『二人椀久』の椀屋久兵衛で六代目市村竹之丞を襲名。昭和47年9月歌舞伎座『逆櫓』の樋口、『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子で五代目中村富十郎を襲名。

 昭和53年より「矢車会」を主宰し、この会は平成21年5月27日に歌舞伎座で行われた"傘寿記念"まで九回を数える事となる。歌舞伎の海外公演には昭和39年8月のハワイ公演をはじめ、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、ソ連(現・ロシア)、エジプト、イタリア、フランスと数多く参加する。昭和47年芸術選奨文部大臣賞。昭和55年『船弁慶』で芸術祭優秀賞。昭和61年日本芸術院賞。平成2年紫綬褒章。平成6年重要無形文化財保持者指定(人間国宝)。平成8年日本芸術院会員。平成15年旭日中綬章。平成20年文化功労者。最後の舞台は平成22年11月新橋演舞場『逆櫓』の畠山重忠。

2011/01/04