吉右衛門が浅草芸能大賞受賞

asakusageino_0321a.jpg

大賞の中村吉右衛門(中央)、右に奨励賞の柳家さん喬、左に新人賞の能年玲奈


 3月21日(土)、東京 浅草公会堂にて、第31回浅草芸能大賞授賞式が行われ、中村吉右衛門が大賞を受賞しました。また、同時に行われた「スターの手型」顕彰式では、中村時蔵が新たに手型が飾られる一人として顕彰されました。

 浅草芸能大賞は昭和59(1984)年、「大衆芸能の奨励と振興を図ること」を目的に公益財団法人台東区芸術文化財団が創設したもので、「東京を中心に活動しているプロの芸能人で、過去の実績と最近の活動状況を勘案して」、賞が贈られます。

 授賞式では吉右衛門について、昭和52(1977)年の浅草公会堂完成の柿葺落に、初世松本白鸚や幸四郎とともに出演、昭和55(1980)年出演の「壽初春花形歌舞伎」がきっかけで始まった興行が、現在の若手歌舞伎俳優の登竜門となっている「新春浅草歌舞伎」に続いていることなどから、「浅草公会堂の歩みとともに、江戸時代から続く、浅草における歌舞伎文化を引き継いでくださった功労者、これほど大賞にふさわしい人はいない」との紹介がありました。

吉右衛門が浅草芸能大賞受賞 吉右衛門は、「このような名誉を与えてくださいましてありがとうございます。役者は日々、精進をいたしておりますけれども、お客様のご支援がなければどうにも成り立ちません。こののちともにご支援いただけますようにお願い申し上げます」と、受賞の喜びと感謝のご挨拶をしました。

 授賞式後のトークでは、浅草象潟(きさかた)町生まれの初世吉右衛門との幼少の頃を懐かしむ話とともに、廻り舞台の装置がない浅草公会堂で『雪暮夜入谷畦道』の「蕎麦屋」を上演するにあたって、「舞台袖で蕎麦屋の屋台を引いてもらいまして、歩いているように足を工夫したり、大変でございました」と、授賞式の話にも出た昭和55年の舞台の思い出を語りました。そして、「高みを目指して舞台をお見せしても、お客様につまらないと言われたらそれでお終い。でも、見てくださるお客様が一人でもいらっしゃれば、やりたいなと私は思っております」と話し、会場から大きな拍手を受けていました。

吉右衛門が浅草芸能大賞受賞

 「新春浅草歌舞伎」でもお馴染みの浅草公会堂入り口のスターの広場に並ぶ「スターの手型」は、「大衆芸能の振興に貢献した芸能人の功績をたたえ、その業績を後世に伝えるため」、台東区が昭和54(1979)年度から被顕彰者の手型とサインを収めているものです。

 今回、平成26年度の被顕彰者の一人に選ばれた時蔵は、歌舞伎俳優の手型も数多く並ぶ中、特に六世中村歌右衛門、七世尾上梅幸の名前を挙げ、「いろんな役を教えていただいた私の大恩人でございます。ほかにもそうそうたる方々がいらっしゃるスターの手型の一人になれたことを、本当にうれしく思っております」と喜びを表しました。

 さらに浅草公会堂の正月公演にも触れ、「二十数年前、私も大きな役を頂戴し、未熟ながらももがいて挑戦した思い出があります。そのとき、一緒に出ていたのが先日亡くなった三津五郎です。先ほど、彼の手型に手を合わせて挨拶をしてまいりました。このスターの手型を汚すことなく、一所懸命、三津五郎の分も芸道に精進してまいる所存です」と、同い年でともに歩んできた三津五郎さんへの思いを込めて語りました。

2015/03/22