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梅枝、「歌舞伎夜話」で熱く語る

「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話」第6回

 

 

 1月20日(水)、歌舞伎座ギャラリーで行われた「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話」第6回に、中村梅枝が登場しました。

 昨年は初めての「四国こんぴら歌舞伎大芝居」に、新作『あらしのよるに』(平成27年9月京都四條南座)出演、『義経千本桜』典侍の局(平成27年7月国立劇場)ほか大役も続き、「濃い一年でした。でも、毎月舞台に出ていたいです」と、充実した表情で振り返った梅枝。しかし子役時代は、舞台に出るのは「嫌ではなかったけれど、ただ当たり前のこと」として淡々と受け止めていたと言います。

 

「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話」第6回

 「歌舞伎俳優として人生を歩み出す、大きな転機になりました」と明かしたのは、『十六夜清心(花街模様薊色縫)』(平成16年1月歌舞伎座)の求女。「化粧して鬘(かつら)をつけてお客様の前に出ると、普段の引っ込み思案な自分を忘れられて、この初役のときはただそのことがうれしかったです。菊五郎のおじさんのお相手で二度目に勤めたとき(平成21年1月歌舞伎座)、初めて『こんなに難しい役だったのか』と気付きました」

 

 意外にも「女方になろう」と強く意識したことはなかったそうですが、「女方でいただくお役に、センスだけでは太刀打ちできない役が出てきたんです。たとえば『おさん茂兵衛(大経師昔暦)』の女中お玉(平成17年11月歌舞伎座)。当時の僕としてはせりふの量もすごく多く、父からは毎日怒られて…悔しかったですね」。絶対ものにしたい、と奮起したことで、ますます歌舞伎にのめり込んでいったと語ります。

 

 そんな梅枝が「芝居を回す役、役者の血がたぎりました」と言うのが、秋季公演で勤めた『魚屋宗五郎』おはま(平成27年11月巡業)です。「おなぎを2度させていただいて、もちろん芝居の流れはわかりますが、見るとやるとは大違いです。チームプレイの芝居で、少しズレると修正が利きません」と熱く語る一方で、一座の和気あいあいの巡業の裏話も飛び出し、会場は笑いの嵐に包まれました。

 

「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話」第6回

 お客様からも質問が挙がったのは「女方の仕草のコツ」。梅枝は、基礎の日本舞踊をしっかり身につけることが大切と語ります。「美しさの表現は、あくまで自分の身体あってのことですから、先輩方のいいとこどりをしてもうまくはいきません。あと、衣裳に“着られる”のではなく、“着れる”ようになるまでには、時間がかかります。仕草などはミリ単位で直すだけで、全然違って見えたりするんですよ」と、真摯な表情を見せました。

 

 今後勤めてみたい役を聞かれると滝夜叉姫を挙げ、「先日たまたま滝夜叉姫の衣裳を着せてもらう機会がありまして、すごく…いい衣裳なんです」との惚れ込みように、お客様からもため息が上がりました。さらには、「江戸に育った人間にはつくれない芝居」と憧れる『河庄』の小春のほか、『加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』の尾上に、「もちろん『嫗山姥(こもちやまんば)』もいずれ…」と、勤めてみたい役は挙げても挙げ尽くせない様子です。

 

 来たる歌舞伎座「二月大歌舞伎」では、夜の部で『籠釣瓶花街酔醒』の傾城九重を勤めます。自ら「一歌舞伎ファンとして、大ファンです」と語る吉右衛門の次郎左衛門との共演、「(配役を聞いて)もう死んでもいいと思いました」と熱が入り、今年のさらなる活躍に期待が高まる一夜となりました。

2016/01/21