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菊五郎、菊之助が語る「團菊祭五月大歌舞伎」

菊五郎、菊之助が語る「團菊祭五月大歌舞伎」

 

 

 5月3日(水・祝)から始まる歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎 七世尾上梅幸二十三回忌追善 十七世市村羽左衛門十七回忌追善」に出演の尾上菊五郎、尾上菊之助が興行への思いと、菊五郎の孫、寺嶋眞秀(てらじま まほろ)の初お目見得について語りました。

 今年の「團菊祭五月大歌舞伎」は、初代坂東楽善、九代目坂東彦三郎、三代目坂東亀蔵の三人の襲名、六代目坂東亀三郎の初舞台、寺嶋眞秀の初お目見得、「そして父と(十七世)羽左衛門の追善興行。お祭り騒ぎ、集大成のようでございます」と、菊五郎の言葉どおりの特別な團菊祭になります。

 

菊五郎劇団を牽引してきた二人の追善興行

 菊五郎の父、七世梅幸の二十三回忌と、襲名する楽善の父、十七世羽左衛門の十七回忌。「團菊祭をすっぽりと、二人にゆかりの狂言でできることがうれしい」と菊五郎は喜びを表しました。梅幸ゆかりの『吉野山』の静御前、『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の政岡を勤める菊之助は、「菊之助襲名の前年に祖父が亡くなりました。襲名披露が一緒にできなかったのが心残りでしたが、二十三回忌でゆかりの狂言をさせていただける。祖父への恩返しのつもりで舞台に立ちたい」と、心境を語りました。

 

 「あんまり冒険はしないけれど、守るべきことを守ってやっていた。正確な演技でした。モダンな紳士と思われていましたけれど、実際は、歌舞伎の本質を見つめてコツコツやる端正な芸でした」。それが、息子の菊五郎が見た父、七世梅幸です。菊之助の目に映った祖父は、「普段は非常に優しく温和で、笑いが絶えない人でしたが、稽古でメガネをはずすと一変し、非常に厳しかった。どこがいい、悪いではなく、繰り返し稽古して体に覚えさせました」。

 

 羽左衛門について菊五郎は、「本当にいろんなことを知っていて、よく教えていただきました」。たとえば、『忠臣蔵』「六段目」の勘平が刀を鏡にして髪をなでつけるところでは、「あれは立ち上がるときにふっと、“鞘走るんだよ”と。私はそれを用いています。そのほうが自然なので」と、教えは今も菊五郎の中に生きています。『壽曽我対面』では、「楽善が、羽左衛門のおじさんに教えられた思い出のある朝比奈」を勤めるため、自身は初役の工藤で、劇中口上も述べます。「酸いも甘いもわかって自分が討たれるという役。色気があったほうがいいでしょうね」。

 

七世梅幸の当り役を勤める菊之助

 『吉野山』については菊之助が、「祖父はなんといってもおおらかさがありました。やるべきことや技巧が先行してしまって、なかなかああいうふうにはできません」と舞台姿を思い起こさせました。『伽羅先代萩』の政岡は、「武家の社会に生きている建前の部分と、死んだ子と対峙したときの本当の自分の感情、母性。本音と建前の使い分けが素晴らしかった」と懐かしみました。

 

 『魚屋宗五郎』は梅幸のおはま、羽左衛門の主計之助で何度も上演されました。菊五郎が宗五郎を勤めるこの演目で今回、丁稚で初お目見得するのが、孫の眞秀です。一人で酒樽を持って花道から登場し、せりふを言ってまた花道を帰っていくという役ですが、菊五郎は「後ろ向きで木魚をたたいているから、(丁稚の姿が)見られない。バックミラーでもつけようかな」と残念そうです。

 

菊五郎が大好きな眞秀の初お目見得

 初お目見得にあたり、取材会の後半に姿を現した眞秀は、「寺嶋眞秀です。よろしくお願いします」と、大きな声で挨拶。「本人がやりたいというのでやらせますが、役者になるかどうかはわかりません」と菊五郎。しかし、「父の追善興行に孫が出られるのはうれしい」と、可愛い孫への気持ちは隠しきれません。菊之助は、「本人が舞台に立ちたいと、父に直接言いました。すごい覚悟。その気持ちを大事にしていってもらいたい」と、甥の門出を優しく見守ります。

 歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」は、5月3日(水・祝)から27日(土)までの公演。チケットは4月12日(水)より、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で発売予定です。

2017/04/05