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芝翫、橋之助、福之助、歌之助が語る「吉例顔見世興行」

芝翫、橋之助、福之助、歌之助が語る「吉例顔見世興行」

 

 

 12月1日(金)~18日(月)、ロームシアター京都 メインホール「當る戌歳 吉例顔見世興行」に出演の中村芝翫、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助が、顔見世での襲名披露にあたり、その思いを語りました。

立役への道を決めた知盛を25年ぶりに

 芝翫は『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」の知盛で、京都の皆様に八代目襲名を披露します。女方か立役か悩んでいた20歳のとき、国立劇場の花形若手歌舞伎(昭和61年4月)で初役を勤めました。「(二世)松緑のおじ様がお化粧してくださいましたのが、ついこの間のことのよう。千穐楽に、これからは立役でいくんだ、しっかり勉強するんだよ、とおっしゃってくださったおじ様の言葉を信じ、今日に至っています」。

 

 知盛は平成4(1992)年歌舞伎座の納涼歌舞伎以来、25年ぶり3度目。「20歳のときの稽古のカセットテープが残っています」。当時は怖いばかりだった二世松緑や、六世歌右衛門の言葉も、今となれば「もう一回、お教えを乞いたい」と願ってもかなわない、貴重な教えにほかなりません。「父(七世芝翫)が亡くなったあとは、先輩が父親代わりのように指導してくださることに、感謝するばかりです」。今回の知盛は、日頃から事細かに教えを受けている仁左衛門に指導を仰ぐと言います。

 

芝翫になった今だからこそ『文七元結』を

 「まさか自分がやるとは」と言ったのが、もう一つの襲名披露狂言『人情噺文七元結』の長兵衛。この演目はこれまで、『魚屋宗五郎』『髪結新三』などと同じく、十八世勘三郎、十世三津五郎という「一緒に汗を流し、一緒に走ってきた兄二人の領域で、自分の領域ではない」と思っていたと明かしました。しかし、「父が晩酌しながら芝居の話をすると、何日かにいっぺんは必ず、“芝のおやじ”の話が出てきた」との思い出からもわかるように、六世菊五郎ゆかりの世話物の立役は、芝翫にとって決して縁遠いものではありません。

 

 「本来、襲名披露狂言は当り役、手の内に入ったものを演ずるのが一番なんでしょうけれど、(顔見世では)自分の新しい姿をお見せしたい。50歳を超え、挑戦していきたいという思い、芝翫になったらやれるのではないかという自負もあります」。これまでの襲名披露狂言とはひと味違う挑戦への意気込みは、劇中の「口上」からもきっと感じていただけることでしょう。

 

これまでの襲名披露を振り返って

 昨年10月歌舞伎座の襲名披露からもうすぐ1年。「あらためて歌舞伎界の素晴らしさを、身をもって感じています」と芝翫が言うのは、なにより息子三人の成長ぶりを見てのこと。「周りの方がすごくよく教えてくださる。本当によく面倒をみてくださいます」。

 

 橋之助は、「今まで経験したことのなかった大きなお役、憧れだったお役、身に余る大役をたくさん勉強させていただきました」と、特に6月博多座での『車引』の梅王丸を挙げ、それと同じく小さい頃から憧れていた『寿曽我対面』の曽我五郎への意気込みを語りました。「歌舞伎俳優の教科書のような大切な狂言。大先輩方に囲まれての五郎、とても楽しみです。1カ月かけて勉強させていただきたい」。『対面』には劇中に兄弟三人の「口上」もあります。

 

 福之助はやっと名前に慣れてきたそうですが、「舞台以外でも初めての経験がたくさんあり、すごくいい経験をさせていただきました」との言葉からは、充実した1年を送ってきた様子がうかがえました。歌之助は襲名披露の総決算として、「顔見世ではいろいろな先輩方とご一緒させていただくことが多いので、一所懸命、自分たちの将来のためになるように勉強したいと思っています」と、しっかりと抱負を述べました。

 

育てていただいた京都で

 芝翫は、京都の顔見世に20数年出ていなかった時期も、南座の若手の公演にはたびたび出演。「『勧進帳』の弁慶の初役も南座ですし(平成6年3月)、すごく思い出が多い。修業した場所であり、歌舞伎だけでなく撮影所にも馴染みがあります。京都に育てていただいたという思いが、たいへん強うございます」と、特別な思いを明かしました。

 

 そして、今年の顔見世はロームシアター京都で幕を開けます。「こののちは歌舞伎界のことを考え、歌舞伎界が隆盛になるよう、日々、努力いたします。ロームシアターでの顔見世よかったねと、京都の歌舞伎ファン、次世代の新しい歌舞伎ファンの胸を打つような興行にしたいと思っております」。

 

 仮の花道を設置するほか、場内提灯やまねき看板、芝居絵看板など、歌舞伎らしいしつらえも検討されており、ロームシアター京都の美観を活かしつつ、着々と準備が進められています。まねき上げなど伝統ある顔見世関連の行事も受け継がれ、歌舞伎の伝統と京都の文化の殿堂が織りなす、“今年ならでは”の「吉例顔見世興行」。お見逃しのないよう、足をお運びください。

 ロームシアター京都 メインホール「京の年中行事 當る戌歳 吉例顔見世興行東西合同大歌舞伎」は、12月1日(金)から18日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で、11月5日(日)発売予定です。

2017/08/24