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歌舞伎座「四月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「四月大歌舞伎」初日開幕

 

 

 4月2日(月)、歌舞伎座百三十年「四月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 新開場から5周年を迎えた歌舞伎座は、明治百五十年記念『西郷と勝』で幕を開けました。江戸城総攻めを前に、薩摩藩の江戸屋敷で話し合う松緑の西郷吉之助と錦之助の勝麟太郎。西郷のひと声で官軍が総攻撃をかけるという緊迫した状況にもかかわらず、穏やかに、しかし、強い信念のこもった言葉で勝に問いかける西郷。松緑は膨大なせりふを感情豊かに語り続け、聞く者の心に景色を、情感を呼び起こさせます。「勝が西郷吉之助を救ってくれた」のひと言に、西郷の器の大きさ、懐の深さが表れました。

 

 通し狂言『裏表先代萩』は、伊達騒動をとり上げた『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』と、その裏側にあった医者殺しの表と裏が交差する物語です。表の仁木弾正と裏の小助を菊五郎が勤めます。医者の道益が、鶴千代毒殺のための薬を調合して弾正から褒美の金を受け取り、その金を道益から奪うのが下男の小助。金に抜け目のない大家をはじめ、世話物の味たっぷりの最初の一場で、悪事に長けた小助がまんまと金を手にする手際には、つい感服してしまいます。 

 

 続いて「御殿」「床下」は、『伽羅先代萩』の名場面。我が子を犠牲にして顔色ひとつ変えずに敵を欺く男勝りの忠義の裏で、母に戻って悲しみに慟哭する、女方の大役といわれる政岡を、時蔵が初役で勤めます。「床下」では、荒事の荒獅子男之助が追い払った鼠が、妖術を解いて弾正となり、面明りに照らし出されます。足を一歩踏み出すごとに揺らめく妖気が見えるようで、鳥屋に消えゆく弾正に拍手がいつまでも続きました。

 

 「小助対決」の場では、奪った金で小間物屋を営み、すっかり垢抜けた小助が、松緑の倉橋弥十郎の鮮やかな裁きでついに命運尽き、続く「仁木刃傷」で弾正は壮絶な最期を遂げます。裏と表、二つの世界のそれぞれの面白さを、今回、自ら台本を見直すことで、よりドラマティックに仕上げた菊五郎。歌舞伎の醍醐味を存分に堪能して昼の部の打ち出しとなりました。

 夜の部は通し狂言『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』。仁左衛門が一世一代で演じる左枝大学之助、立場の太平次の2役は、顔が似ているというのが肝で、どちらも徹底した極悪非道ぶりです。深編笠を被ったまま、口封じのためにあっさりと人を斬る大学之助。花道の七三でようやく笠を取ると、場内のお客様から大きな拍手が沸きます。不敵な笑みを浮かべ、序盤から底知れぬ恐ろしさを見せました。

 

 分家の当主である大学之助は、御家横領を企んでおり、たとえ子どもでも躊躇なく斬り捨てて、その大望を遂げるために利用します。配下の太平次も、大学之助のため、邪魔する者を次々と手にかけます。さまざまな手法で殺しを繰り返していく両者。 

 

 御家乗っ取りに必要な宝物を必死に守ろうとする錦之助の与兵衛と孝太郎のお亀、太平次をはさんで意地を張りあう時蔵のうんざりお松と、吉弥の女房お道、登場人物たちの魅力が、殺しの悲惨さを際立たせました。そして、いつの間にか悪の2役に魅入られたかのように、芝居にとり込まれてしまいます。

 

 一つひとつの殺しの鮮やかさや、殺したあとにふと見せる表情、引込みの気迫に、芝居として、役としての魅力があふれた2役で、そこに善悪を超越して心躍らせてしまうのが歌舞伎の妙味。

 

 今回で演じ納めとなる仁左衛門の大学之助、太平次は最後までお客様の心をつかんで離さず、切り口上で幕が閉まった後も満場の拍手が贈られていました。 

歌舞伎座「四月大歌舞伎」初日開幕

 木挽町広場は春爛漫、ぜひお立ち寄りください!

 歌舞伎座百三十年「四月大歌舞伎」は26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/04/03