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歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 

 

 6月2日(土)、歌舞伎座「六月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 御簾の奥にどっしりと腰を下ろした楽善の入鹿。御殿の重厚な雰囲気とは場違いな漁師言葉の松緑の鱶七。『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』「三笠山御殿」は対照的な二人の腹の探り合いから始まり、鱶七が荒事の面白さを見せました。

 

 対照的なのが、恋する求女を追って来た時蔵のお三輪。官女たちに囲まれても心は求女にあって気もそぞろ、不器用なふるまいや、髪振り乱しての一途な思いが心を打ちます。激しい心情を表しながらも女方の美しさを失わないお三輪に、客席がうならされました。

 

 中幕では、菊之助が先月に続いて『六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)』から、今度は『文屋』を踊ります。ちょっと好色で愛嬌のある公家の文屋康秀が、恋づくしの問答をはじめ、官女たちを相手に軽妙な踊りで楽しませます。履物の鼻緒が切れた文屋が、一本足で形をとる振りでは、客席が何度も沸きました。

 

 

 菊五郎が20年ぶりに悟助を勤める『野晒悟助(のざらしごすけ)』。野ざらしの髑髏からすすきが生えた絵柄の衣裳で登場です。悟助には、小田井とお賤の二人にひと目惚れさせる魅力と、礼をして鳥居をくぐる信心深さがあり、多勢を相手にひるまぬ強さがあります。最後の四天王寺の足場を使った大立廻りでは、さまざまなタテが小気味よくきまり、菊五郎の見得も鮮やかに、昼の幕切れとなりました。

 

 夜の部は『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』から。牢から出たばかりでむさくるしい団七が、すっきりとしたいで立ちとなって現れると、客席から大きな感嘆が聞こえました。団七は吉右衛門。孫の寺嶋和史が演じる団七伜市松をおぶり、親子の情愛をかいま見せます。その団七がなによりも大事にしているのが、恩ある玉島家。恩義を感じる舅との親子関係にも勝る思いが、団七の運命を狂わせます。

 

 歌六の釣船三婦が思わず昔のように喧嘩に駆け出し、東蔵のおつぎが駆け出してそれを見送る、そんな一コマが描き出す人物の厚みが、芝居に深みを与えます。まぶしい日差しがじりじりと照りつけ、火傷しそうなほどの暑さが芝居を覆い尽くすことで、宵宮の団七の焦燥感があおられ、殺し場の恍惚感にも似た一瞬一瞬が、団七の見得となって目に焼き付きました。

 

 切狂言は、24年ぶりに上演される宇野信夫作『巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)』。十七世勘三郎が得意としていた龍達を、その舞台が大好きで毎日見ていたという芝翫が初役で勤めます。

 

 貧乏暮らしの松緑の太十と雀右衛門のおいち夫婦が引きとった伯父の龍達は、強欲で女癖も悪いくせに、もう女はこりごりとこぼすような破戒坊主。隠していた金を巡って怒鳴り合いの口喧嘩をしては、南無妙法蓮華経と題目を唱える龍達に、客席から何度も笑いが起きます。ところが、腹に据えかねた太十の怒りが思わぬ方向に進み、芝居はやがて身の毛もよだつ怪談に…。ひんやりと背筋が凍ったところで初日の幕が降りました。

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 木挽町広場はすっかり初夏の装い。夏季限定の出店もありますので、ご観劇の前後に、ぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「六月大歌舞伎」は6月26日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/06/04