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歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」初日開幕

 

 

 10月1日(月)、歌舞伎座百三十年「芸術祭十月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 台風一過の初日1日。活気あふれる場内の熱そのままに、10月とは思えない暑さとなった十八世中村勘三郎七回忌追善の公演初日は、七之助が歌舞伎座で初めて大川端のお嬢吉三を見せた『三人吉三巴白浪』で幕を開けました。

 

 お嬢吉三がゆっくり左足を杭にかけると、にわかに月が明るく浮かび上がり、「月も朧に白魚の」と、待ってましたの名ぜりふが始まりました。お坊吉三に声をかけられたお嬢が、声色を使い分けるのも面白く、笑いを誘います。名うての和尚吉三もそろっての義兄弟の契りは、獅童、七之助、巳之助と、それぞれ浅草歌舞伎で初役を勤めた三人による新鮮な顔合わせとなりました。

 

  十七世勘三郎に書き下ろされた舞踊劇『大江山酒呑童子』は、10年前の納涼歌舞伎で、十八世勘三郎が初めて歌舞伎座で酒呑童子を演じました。その舞台で公時だった勘九郎が酒呑童子を勤め、10年前の舞台で源頼光を勤めた扇雀が鬼神退治に向かいます。「世の中に酒ほどの楽しみはなきほどに」という酒呑童子の飲みっぷりはユーモラスで、葛桶に腰かけたまま踊ったり、足元もおぼつかない様子から、きびきびと足拍子を効かせたりとみどころが続きます。後ジテは角を生やした鬼神となり、最後まで踊りの面白さ満載のひと幕でした。

 

 昼の部の切は『佐倉義民伝』。白鸚が宗吾を初演したとき、監修にあたったのは十七世勘三郎でした。しんしんと雪が降りつむ中、江戸から1年ぶりに家族の待つ家へ戻ってきたというのに深いため息をつく宗吾。領民のため「命一つも投げ出す所存」と覚悟を見せる宗吾の姿に、心揺さぶられずにはいられません。七之助の女房おさんと子どもたちとの別れに、客席からもすすり泣きが聞こえました。降りしきる雪に子らの姿も遠くなり、宗吾の慟哭が胸を打ちます。そして、紅葉の季節となって、「上様にご直訴」の宗吾の叫び。縄にかかった宗吾の幕切れの表情が、いつまでも目に残りました。

 夜の部は、歌舞伎のさまざまな役が一度に登場する華やかな『宮島のだんまり』で幕を開けます。安芸の宮島、厳島神社を背景に源平の世界に登場する人物たちが次々と現れます。暗闇の中の探り合いのうちにさまざまな形をきめ、舞台いっぱいに並ぶ眺めは壮観です。幕が降りてから再び現れたのは、妖術で姿を消していた扇雀の傾城浮舟太夫実は袈裟太郎。面灯りに照らし出された姿はなんとも古怪で、花魁道中のように外八文字を見せたかと思うと、豪快な六方を見せました。

 

 『吉野山』はその原型をたどると、中村座初演の富本節の道行にいきつきます。勘三郎の名跡はこの中村座の座元の名でもあります。静御前の玉三郎は十八世勘三郎とも踊っており、今回、初めて相手役となる勘九郎は、襲名披露以来6年ぶりの佐藤四郎兵衛忠信実は源九郎狐です。静の鼓の音が山間に響いたところに、東からげの旅姿で現れた忠信。静と二人の場面ではまさに女雛男雛、飾りたくなるような美しさ。戦物語では清元と義太夫に合わせた踊り分けで見せます。最後は山々を見晴らすようにして、悠然と花道を引っ込みました。

 

 七回忌追善を締めくくるのは『助六曲輪初花桜』。船に揺られるように花道から現れた七之助初役の揚巻に、大きな拍手が沸きます。歌六の意休に間夫の助六の悪口を言われると、悪態の初音を堂々と聞かせ、「間夫がなければ女郎は闇」と一歩も引きません。

 

 そして、「ここを浮世の仲之町。恋に焦がれて助六が」と長唄のオキが聞こえたら、いよいよ仁左衛門の助六の登場、客席から大きな拍手が送られます。勘九郎の白酒売と二人で喧嘩を仕掛ける場面は、場内の笑いが絶えません。歌舞伎座さよなら公演での勘三郎の通人里暁の姿も思い浮かびます。最後は助六と揚巻、絵になる二人の姿を目に焼き付けて幕となりました。 

歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」初日開幕

 正面玄関を入って、向かって左寄りにあります

 歌舞伎座場内には、十八世勘三郎七回忌追善の祭壇もしつらえられ、あらためて故人を偲び、手を合わせるお客様の姿も見られました。

 

歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」初日開幕

 ひと足早く紅葉いっぱいの木挽町広場。ご来場記念の写真スポットもあります

 木挽町広場には秋の味覚満載、ご観劇の折は地下2階にもぜひお立ち寄りください。歌舞伎座百三十年「芸術祭十月大歌舞伎」は、10月1日(月)から25日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/10/02