獅童が語る、博多座『あらしのよるに』

獅童が語る、博多座『あらしのよるに』

 『あらしのよるに』 中村獅童

 11月3日(土・祝)から始まる、博多座「十一月花形歌舞伎」で、『あらしのよるに』に出演する中村獅童が、博多座公演に向けての思いを語りました。

 ――南座、歌舞伎座、そして博多座での公演です。

 博多山笠のお祭り文化が根付いているからなのか、博多の方々は一度火がつくと、とても熱くなって観てくださるので上演が楽しみです。(原作絵本の絵の)あべ弘士先生に特別に描き下ろしていただいたチラシも山笠で、博多でやるってことがよくわかるし、あれはうれしいですね。僕にとっての博多は、大役の初役をさせていただいたことが多く、思い出深い場所です。

 

 ――3回目の上演、どんなふうに。

 僕らは毎回、初演のつもりでやらせていただいています。南座、歌舞伎座でやったものを博多座で、ではなくて新たな気持ちでやります。歌舞伎座の稽古場でも、松也くんと二人の場面で、さらっとやっていたところを、もうちょっと意味を深めてやりたい、と思うことがあったりして、演出の宗家(藤間勘十郎)と相談しながらさせていただきました。新鮮な気持ちで毎回やるので、今回はここをこうしたい、ということが当然、出てくるんです。

 

 ――南座から歌舞伎座でも、変わったところがありました。

 大筋は変わらないけれど、細かいところの解釈というか、わかりにくいところを、もうひと押しあったほうがよくわかる、簡単にいうとそういう部分が変わりました。たとえば、がぶが群れから外れて一人になった、そのことをせりふでも言っているけど、もっと強調したりとか。舞台を見て、もっとはっきりわかったほうがいい、ということを変えています。博多座は劇場の大きさが違うので、立ってみての変更もあると思います。

 

 ――衣裳や小道具になども変化があったりしたのでしょうか。

 狼の手が動かしやすくなったりなど、小道具さん、大道具さん、衣裳さんが細かい改良をしてくれています。全体には写実になりすぎない、どこか絵本の世界というほんわかした雰囲気を出したい、ということは言いました。そして、月にはすごくこだわりましたね。3階の後ろのお客様まではっきり見えるようにしたいけど、角度が難しい。照明の池田智哉さんと明るさ、形、一番きれいな見え方にこだわりました。

 

獅童が語る、博多座『あらしのよるに』

 『あらしのよるに』 左より、尾上松也、中村獅童

 ――月の場面は喜びを表すがぶとめいの動きも激しいところです。

 松也くんも『あらしのよるに』は結構きつい、と言っていました。実は動物の動きって、見た目より体力を消耗するんです。月の場面は大詰で、がぶとめいが義太夫に合わせて『四の切』ではないけれど、ここから突っ走っていく感じ、二人の喜びを表すようなところです。やはり『あらしのよるに』の根底はそこにあります。義太夫、長唄、古典的な芝居の運びです。

 

 ――義太夫はこの作品の大きな特徴ともいえます。

 義太夫も絵本のなかの言葉だから、お子様もわかります。心の葛藤、心の声を義太夫が語るのは歌舞伎ならではの面白いところ。歌舞伎には、着ぐるみを着なくても、ちょっとした工夫で狐に見せる演技法もあります。ちょっとした工夫を皆が研究して、狼や山羊に見えてくる演技をしました。演者、個人個人の工夫です。

 

 衣裳のひびのこづえさんは、歌舞伎の狐の写真などを見たり、狼の写真を見たりされていました。狼の衣裳の肩のあたりを見て、あべ弘士先生が、この狼の表現は正しいとおっしゃっていましたから、ずいぶん研究なさったんだと思います。鬘(かつら)にしても、古典にあるものに耳をつけたりとひと工夫して、狼に、山羊に見せる。それがこだわりでした。

 

 ――歌舞伎での表現に、こだわりがあったということですね。

 絵本の世界観を歌舞伎にするとき、歌舞伎のもつノスタルジックな、古典の魅力を当て込むのが面白いんじゃないか。その直感が始まりで、だからこその、こだわりでもあります。初演はやはり不安でした。でも、やはりこのストーリーに引き込まれていくんです。演じる一人ひとりの心に突き刺さるものがあるからこそ、なによりも演者がストーリーに引き込まれていきました。

 

 ――獅童さんはじめ皆さんが、この作品を大切にしていることが伝わってきます。

 3度目の上演ですが、権十郎のお兄さんのような先輩のほうから、ちゃんと時間をとって稽古しようよと、おっしゃってくださる。うれしかったですね。『あらしのよるに』は、いろいろなことに当てはめて見ることができて、舞台をご覧になった方が意外な見方もしてくださる。テーマとしては大人のテーマなんです。だから、海外でやりたい。こういう作品が世界中の人に愛されるようなら、争いごとも減るのかなと思います。

 博多座「十一月花形歌舞伎」は11月3日(土・祝)から27日(火)までの公演。博多座では公演に合わせ、作品をより楽しんでいただけるイベントがいろいろ予定されています。ぜひ、ご都合を合わせてご参加ください。

 

獅童が語る、博多座『あらしのよるに』

 衣裳展では博多座の舞台で使われるみい姫、がぶ、めい、おじじの衣裳を展示

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福岡PARCO

新作歌舞伎 あらしのよるにの世界展

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日時

2018年11月4日(日)まで 10:00~20:30

※入場無料

 

場所

福岡PARCO 本館5階

(福岡市中央区天神2-11-1)

 

内容

 『あらしのよるに』の舞台で実際に使用される衣裳、小道具のほか、道具帳や衣裳デザイン画、原作絵本の原画などを間近でご覧いただけます。獅童が演じた役の押隈も特別展示。限定のコラボレーショングッズの販売もあります。

 

詳細、お問い合わせはこちら(福岡PARCOのサイト)

 

 

獅童が語る、博多座『あらしのよるに』

 『かぶき絵本 あらしのよるに』(講談社刊)

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「歌舞伎絵本 あらしのよるに」

トークイベント&お渡し会

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日時

2018年11月5日(月)

 

場所

岩田屋本館 1階きらめき広場

 

内容

 10月31日(水)発行の『かぶき絵本 あらしのよるに』(講談社刊)を、事前申込み、または当日に購入された方が、限定でトークイベントに参加いただけます。トーク終了後、作者きむらゆういち氏のサイン本を獅童からお渡しします。

 

詳細、本のお申込みはこちら(博多座のサイト)

2018年10月18日

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