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南座新開場記念「當る亥歳 吉例顔見世興行」初日の賑わい

 11月1日(木)、南座が「當る亥歳 吉例顔見世興行」で新開場し、華々しく公演初日の幕を開けました。

 新開場の舞台を最初に飾ったのは『毛抜』。おおらかな雰囲気にあふれ、荒事の魅力と色気を兼ね備えた左團次の粂寺弾正が場内を沸かせるたび、新しい劇場に芝居の息吹が吹き込まれ、南座がだんだんと息づいていくのがわかります。ご見物のお客様に挨拶し、花道を悠々と引き揚げる弾正に大きな拍手が送られました。

 

 十代目幸四郎と八代目染五郎の襲名披露狂言『連獅子』。幸四郎が初めて仔獅子を勤めたのは12歳、染五郎は一昨年11歳のときに1日だけ勤めていますが、本興行は今回が初役です。前シテの衣裳はそれぞれ父譲りで、初演のときにつくって以来の披露となりました。二人の狂言師が競い合うように踊る獅子の精は、南座の舞台に毛振りの美しい軌跡を残し、襲名の二人は祝福の拍手に包まれました。

 

 近年は八右衛門を勤めることの多かった仁左衛門が、自身の襲名披露以来の忠兵衛を勤める『封印切』。孝太郎の梅川、鴈治郎の八右衛門に、秀太郎のおえんと、上方歌舞伎を担う顔がそろい、南座の顔見世興行らしいひと幕になりました。八右衛門の挑発にこらえきれず、ついに封印を切る忠兵衛。三国一の合方にあおられるかのように金をぶちまけ、放心状態で花道をいく忠兵衛は、お客様の視線を一身に集めたまま引っ込んでいきました。

 

 二代目白鸚の襲名披露狂言『御存 鈴ヶ森』。顔見世興行で上演されるのは昭和44(1969)年以来です。愛之助の白井権八を「お若えの、待たっせえやし」と呼び止めた白鸚の長兵衛が顔を見せると、「高麗屋!」と、ひときわ大きな拍手が起こりました。当り役とした五世幸四郎を折り込んだせりふや、高麗屋格子の衣裳など、襲名披露を待ちわびた京都のお客様を喜ばせる演目で、昼の部の打ち出しとなりました。

 新開場と顔見世興行の開幕を祝う『寿曽我対面』から、夜の部が始まりました。仁左衛門の工藤、秀太郎の舞鶴に、曽我兄弟は孝太郎と愛之助です。十郎と五郎を見守る大きさをたたえた工藤と舞鶴。祝祭色の強いひと幕が、お客様をいつもの顔見世興行にもまして特別な気分へといざないました。

 

 襲名披露『口上』はこれまでと異なり、白鸚、幸四郎、染五郎の襲名を藤十郎と仁左衛門が紹介する形で行われました。藤十郎が三代の襲名を祝し、仁左衛門も「奇跡に近いことで、これからのご発展が本当に楽しみ」と続けました。祝辞を受けた白鸚は感謝とともに、「待ちに待った新装南座でございます。南座さんと私ども高麗屋とはたいへん古くからご縁がございまして、祖父、父の代を入れて100年近くになります」と、昭和26(1951)年の南座初舞台の話にもふれ、南座への親しみを込めました。

 

 幸四郎は36年前の三代襲名の折、南座では九代目幸四郎のみの出演だったのが、今回は「父は初めて松本白鸚として、南座にまねきを上げることがかない、倅がひと月学校を休み、三代そろっての襲名披露興行が当月かないましたること、この上なき幸せと存じおる次第にございます」と、声を弾ませました。ご当地初お目見得に感謝する染五郎が、「昼の部では、初舞台にて『連獅子』を、親獅子を超える心意気で、夜の部では『勧進帳』の義経を、人生最大の緊張を感じながら勤めさせていただいております」と意気込みを見せると、「染高麗!」の声もかかりました。

 

 そして、高麗屋三代が弁慶、富樫、義経を勤める『勧進帳』。襲名披露で4度目の上演となる今回、幸四郎は父が見せた「滝流し」のくだりを、この襲名披露の舞台で受け継ぎます。終盤、延年の舞に続いての舞は、体力的にもぎりぎりのはずですが、弁慶として、松羽目物として、品格を落とすことなく勤め上げ、豪快な六方で引込んだ弁慶に贈られた割れんばかりの拍手が、南座を揺らしました。

 

 切狂言の『雁のたより』では、鴈治郎の髪結三二五郎七が、客席を何度も沸かせます。幸四郎が髪結にやってくる若旦那役で出演、鴈治郎と二人のやりとりでは南座や襲名を折り込んだり、互いに褒め合ったり。「ほな、いにましょか」と言いながらも名残惜しそうに花道を引込む若旦那に、五郎七がひと声かけるところまで、笑いの絶えることがありませんでした。初日から出演者の息がぴったりで、これぞ上方歌舞伎。満足感いっぱいで南座をあとにされるお客様の賑わいで、ライトアップされた南座がいっそうの輝きを放っていました。

南座「當る亥歳 吉例顔見世興行」初日開幕

 ためしに「電話屋」と声をかけると…!

 川端通り側の1階ロビーには、歌舞伎俳優へのかけ声、いわゆる“大向う”をゲーム感覚で体験できる「歌舞伎シャウト」が展示されています。今春、幕張メッセ「超歌舞伎」の会場で人気を博し、NTTが松竹と連携して開発した「歌舞伎シャウト」、今回はさらに進化したコンパクトバージョンで、南座初登場。役者絵が映ったモニタに屋号のかけ声をかけると、その声が文字となって画面に表示され、出来のよしあしに応じて役者絵が異なった動きを見せます。よりよいタイミング、声量で声をかけると高評価が得られます。

 

 舞台にはなかなか声がかけられなかった方も、ここではお気軽に参加できます。幕間のお楽しみにもぴったりなこちらのコーナーへ、ぜひお立ち寄りください。

 南座「當る亥歳 吉例顔見世興行」11月公演は11月25日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/11/02