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愛之助が語る「システィーナ歌舞伎」『TAMETOMO』

愛之助が語る「システィーナ歌舞伎」『TAMETOMO』

 2019年2月22日(金)・23日(土)・24日(日)、徳島県の大塚国際美術館システィーナ・ホール「第九回 システィーナ歌舞伎」『新説諸国譚(しんしょこくものがたり)TAMETOMO』に出演する片岡愛之助が、作・演出の水口一夫と、今回の公演についての思いを語りました。

壮大な物語の伝説のヒーロー、源為朝

 第九回を迎える「システィーナ歌舞伎」で、第三回から7度目の出演となる愛之助が勤めるのは、“TAMETOMO”。保元の乱で清盛、義朝の軍に敗れた鎮西八郎源為朝のことで、歌舞伎では曲亭馬琴の『椿説弓張月』でお馴染みのヒーローです。「強いし、格好いいし、男らしい」と水口。「僕はどんなお役も楽しんで勤めさせていただくので、ヒーローだから何か変わるわけではなく、役を構築していくうえではどれも同じです。役は好きにならないと演じられないし、あとはそこに命を吹き込むだけです」。愛之助は新たに役をつくり上げていく楽しみがあると笑顔で語りました。

 

 「『椿説弓張月』は、馬琴が『南総里見八犬伝』より前に書いた、29冊にもわたる長篇で、主要な登場人物だけで30人を優に超えます。話がものすごく広がっていて伊豆大島、四国、九州とあちこちに行きます」。そして為朝が、最後にたどり着くのが琉球です。「今回は、琉球に着く前の大嵐のところ、為朝の妻の白縫姫が自害し、子の舜天丸(すてまる)と離れてしまうところから始めます。最後は、濛雲(もううん)という妖術師が、虎になったり大蛇になったりするので大変なんですが…」

 

愛之助が語る「システィーナ歌舞伎」『TAMETOMO』

見たこともない為朝誕生の予感

 今回ばかりは、とり上げた題材の壮大さを前に手を上げそうな水口に、「大丈夫です、毎回、こんな感じで話ができ上がっていくので」、と頼もしいひと言を放ったのは愛之助。「虎は『吃又』の虎を使う?」「それは可愛すぎる、動きにくいし」と、さっそくいつもの調子で話が始まりました。初日まで、創意工夫とひらめきとアイディアを、一つの舞台に昇華していく作業が続きます。どんな新しい演出が見られるか、演出家の「頭の中にはありますけど、まだ公表はできません」と、ゲスト出演の有無についても含みを持たせました。

 

 歴史上、敗者の側にありながら、弓の名手で勇猛果敢な戦いぶりなど、数々の英雄伝説で語られることの多い為朝。しかし、これまでも赤毛の五右衛門が登場しているシスティーナ歌舞伎、「武将ですから、衣裳は歌舞伎の決まりものの狩衣になるでしょうが、きっと予想を覆すような為朝になります。(登場人物が多くても)2役、3役はいつもやっていますし大丈夫です」と、愛之助からは期待が高まる宣言も飛び出しました。

 

琉球一色では終わらないのがシスティーナ歌舞伎

 物語の中心が琉球ですから、「組踊(くみおどり)はもちろん、琉球舞踊、さらには伊勢踊りや島唄などを入れられたらと思っています」と水口が構想を述べると、「それが、今回の僕の課題になりますね」と愛之助。「またゼロからの挑戦です。どれもかなり難しいと思いますが」。『GOEMON』でゼロからフラメンコに挑戦したときは、愛之助が稽古場で苦戦しているのを「水口先生がうれしそうに見ていた」というこぼれ話も出ました。

 

 それらの和の要素に、「和と洋のコラボレーション」を掲げるシスティーナ歌舞伎では、洋の要素が絡んできます。「たとえば、ドミファソシドの五音音階の琉球の音楽に、ハワイアンを入れて作曲してもらったら面白いのでは」など、水口にはいくつか温めているものがある様子。新たなコラボレーションがどんな演出で表現されるのか、「乞うご期待。きっとご期待に沿えるものが生まれてきます」と、愛之助が太鼓判を押しました。

 

積み上げた経験が新たな創造へとつながる

 ローマのシスティーナ礼拝堂を模した細長いホールで、たくさんのお客様に見ていただきたいとたどり着いたのが、客席に囲まれ、花道のついたアリーナ形式の舞台です。「お客様が一番見やすい。ですが、僕らはどこに向かって見得をしたらいいのか、稽古場ではわかっていても、現地に着いて慣れるまでは、一瞬、舞台の真ん中で引込む方向がわからなくなるんです。間違えると裏をぐるっと回らなければならないので、大変なことになる。毎回、慣れるしかありません」。

 

 客席に囲まれた舞台なので、背景となる舞台装置などは使いません。演出の側からいえば、「照明と音楽でパッと場面を変えられる」、為朝がどこへ行こうと「それらしく見せることができる。あとは、演じる役者の腕です」、と愛之助に視線を送ります。「はい、頑張ります」とちょっと苦笑いの愛之助は、場面が瞬時に変わってなにが大変といって、「早替りの時間がないことです。ものすごいスピードでやらないといけないので、いつも鍛えられています」。

 

 劇場とは違う空間、その空間を囲む壁画を最大限活かそうと、「ここぞというときは壁画を意識して」、立ち位置や見得をする方向、照明などにも工夫を凝らします。「システィーナ歌舞伎が生んだ『GOEMON』が、後に大劇場でも上演されたのがうれしかった」と愛之助。回数を重ねてきたシスティーナ歌舞伎が創造の源泉となり、つくり手の情熱とともに脈々とあふれ出して、これからの歌舞伎をおおいに盛り上げていくことは間違いありません。ぜひ来年2月は、徳島の会場へ足をお運びください。

 大塚国際美術館システィーナ・ホール「第九回 システィーナ歌舞伎」は、2019年2月22日(金)・23日(土)・24日(日)の公演。チケットは、チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で、12月13日(木)発売予定です。

2018/12/12