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玉三郎が語る、南座「坂東玉三郎特別公演」

玉三郎が語る、南座「坂東玉三郎特別公演」

 

 

 3月2日(土)から始まる南座「坂東玉三郎特別公演」で、坂東玉三郎が、出演する『阿古屋』『傾城雪吉原』について語りました。

南座7年ぶりの『阿古屋』上演に向けて

 昨年12月歌舞伎座で、約32年ぶりに玉三郎以外の阿古屋が舞台に立ちました。「いい意味で、私の役に対しての心境は変わりませんでした。とにかく、一所懸命やらないと無事に終わらない役。そして、楽器を弾く以外に面白みの少ない芝居なので、平家が滅んでいく、壇ノ浦に向かっていく雰囲気というものを、どこかに感じさせることが大事です」。南座で7年ぶりの阿古屋を勤めるにあたっても、玉三郎の役に対する思いに揺らぎはありません。

 

 同時に、岩永として舞台に立ったことで、気づいたこともありました。阿古屋が三味線を弾き始めてからは「右側(舞台の中央から下手寄り)だけの舞台になって、左側がお休みの時間になっている、左側が小さい芝居になっている」。そこで今回は、演奏者の理解が得られたら、「三味線のところを義太夫さんとも合奏し、義太夫の上に三味線が出てきて、三味線が一人で聴こえるところも、2挺聴こえるところも、合奏のところもあったら、もっと躍動感が出てくるんじゃないかと考えています」。

 

玉三郎が語る、南座「坂東玉三郎特別公演」

新しい阿古屋の衣裳で南座に登場

 岩永は阿古屋の胡弓の演奏で、阿古屋の真似をして見せますが、「あまり早いうちからチャリ場になると、胡弓が聴こえなくなる。吉野龍田の、のひとくだりが終わってから動くようにしています。これは、阿古屋をやった人でないと、なかなかわからないことだと思います」。三味線が「わが夫(つま)の」のところで止まってしまうのを、「岩永が居眠りしているので重忠がコレ、といって起こしたのを、はっと気づいたようにしたのもよかった」。これは十八世勘三郎のアイディアで、「今回もその形」になります。

 

 さらに、今回の公演では阿古屋の衣裳が新しくなります。これまでの衣裳は、室井東志生のオリジナルの蝶が描かれたものでした。「六代目歌右衛門さんの衣裳は高根宏浩(たかねこうこう)さんが考案なさった、御簾に平家の紋である向かい蝶のもの。そのときの蝶の色合いに戻します。ほとんど変わりがありませんが、少し時代を戻して」違うものをつくれば、後輩も着ていけるのではと玉三郎。阿古屋が次の世代へと受け継がれていきます。

 

阿古屋を後輩へつなぐということ

 「二人とも(稽古を)三味線から始めていたので、三曲をよく弾いていました。琴の爪音(つまおと)がなかなかやわらかくならなかったのを悔しがっていましたが、これは経験によるもの。また、唄いながら弾く琴唄がとても大変で、二人はこれからもやると言っていました。とりあえず、型を写したということになりますね」。琴から稽古を始めて三味線が苦手という玉三郎は、「三味線なんか、私よりずっとうまかった」と、梅枝と児太郎の阿古屋を褒めながら、阿古屋という役を渡していくことについて語りました。

 

 「景清を知らないという、お白洲での哀しい芝居ではあるけれど、華やかさも見せないといけない。かといって、華やかならいいというものではない、と伝えました。そして、楽器を弾いていることが前に出るのではなく、かつ、サワリをするのではなく、景清とのサワリが踊りにならないように、体で語るように、と言いました。なにか表現しようとしなくても、ひたすらやっていればお客様に伝わるものです」。自分の経験則を伝えられてよかったと微笑みました。

 

 役の継承というのは、たとえまったく同じことをしても、演じる俳優が違えば違うものになり、「完璧な意味では、“ない”」とし、それよりも「彼らがその形をやってみて、彼らの心で阿古屋をどう解釈していくかが大事。違う形、あるいは、彼らの考える正確な阿古屋の解釈というのが出てきて、また違ういい形が出てくるでしょう。これからほかの阿古屋も出てきて、誰の阿古屋がどう、ということになっていくのだと思います」。

 

玉三郎が語る、南座「坂東玉三郎特別公演」

新作が似合う南座

 12月の歌舞伎座で新作舞踊として披露された『傾城雪吉原』については、「四季の紋日は小車や、からは『高尾懺悔(たかおさんげ)』の春夏秋冬のところを入れてあります」。今の時代に名曲を踊るための工夫が、一つの新作につながりました。亡霊が罪を悔いる恐ろしい物語ではなく、「雪の吉原にすると風情があるんじゃないか。最後に春がやってくる、これから季節が巡ってくるという終わり方にしています」。

 

 「舞踊というのは、名曲が残っています。上演されるために、お客様が楽しいと思えるものに改曲するのは、よく考えてやっていくことならば、あることだと思っています」。これまで、乱拍子入りの『娘道成寺』や「杵勝三伝」の『船弁慶』などを南座で初演している玉三郎にとっては、南座という劇場は「お客様と近い関係を持てるいい空間」。南座、玉三郎、新作舞踊の組み合わせが、また新たな感動への期待につながりました。

 南座「坂東玉三郎特別公演」は、3月2日(土)から26日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2019/01/22