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獅童が語る「オフシアター歌舞伎」

獅童が語る「オフシアター歌舞伎」

 5月11日(土)から、東京の天王洲、歌舞伎町で開催される「オフシアター歌舞伎」『女殺油地獄』に出演の中村獅童、脚本・演出・出演の赤堀雅秋が、公演へ向けての思いを語りました。

 天王洲の寺田倉庫、歌舞伎町の新宿FACEという、これまで歌舞伎が上演されることがなかった空間を使って行われる「オフシアター歌舞伎」。演目に近松の『女殺油地獄』をとり上げ、古典作品を用いた新たな可能性を追及する、注目の舞台です。

 

倉庫で歌舞伎を

 「倉庫で歌舞伎をやってみたかったんです」と、堰を切ったように語り始めた獅童。以前、ニューヨークに行った際に、「海外ではそれこそ倉庫での上演や、さまざまなスタイルの演劇がある」と知ったこと、そして平成18(2006)年に『女殺油地獄』の与兵衛を初めて演じたときに、「いつかまた違った形でこの題材をやりたい」と感じたことが、今回の公演につながったといいます。

 

 いわゆる劇場とは異なる、舞台と客席がより密接した場所で歌舞伎を上演する今回の公演。演出の赤堀は、「手を伸ばせば届くような距離感でやる。自分たちとは違う世界のものを見せるというよりは、至近距離で何か事件を目撃するというような、そういう生々しい感覚のお芝居になればいい」と、熱を込めて語りました。

 

獅童が語る「オフシアター歌舞伎」

自分らしいスタイルを追求して

 獅童は、これまでに『あらしのよるに』や「超歌舞伎」など、歌舞伎の新しい表現に次々と挑戦してきました。「伝統を守りつつ革新を、中村獅童ならではのスタイルを、追い求めたいという思いがある。今回は、今まで僕がつくってきた歌舞伎とはまた異なった、『女殺油地獄』という作品として、歌舞伎のもっているダークな部分を押し出すことにチャレンジしたい」と、意欲的です。

 

 「自分が若い頃から触れてきた、映画や歌舞伎以外の演劇、ファッション、ロック、そうしたすべての要素が、歌舞伎にはある。今回は歌舞伎や演劇好きの方はもちろん、ファッションなどが好きな若い方たちにもぜひ見ていただきたい」。劇場ではない場所を使うことによる制約もありますが、逆にそれだからこそできる会場づくりや見え方を工夫したい、と目を輝かせました。

 

獅童が語る「オフシアター歌舞伎」

稽古が待ち遠しい

 また、獅童は自身が勤める与兵衛について、「初めて勤めたときに、仁左衛門のお兄さんから稽古をつけていただいた。それをもとに、どういう風にやっていくか。ただ凶暴なのではなく、普通の坊ちゃんが、いろいろなことがうまくいかず、深みにはまっていく…そこで揺れ動く人間の姿を表現したい」と気合十分。「稽古場で、皆で芝居をぶつけあったときに生まれるものもある。歌舞伎に現代の演出家が加わることで、どんな化学反応が起こるかが楽しみ」と、4月に始まる稽古が待ちきれない様子です。

 

 続けて赤堀も、「『女殺油地獄』は、普遍的で、とても優れた戯曲だなという思いがある。経済の至上主義のなかで、なかなか波にうまく乗れなくて落ちこぼれていった人間の悲哀のようなものを描けたら。奇をてらわず、とにかく今の、現代に生きているお客様の心を揺さぶる作品になれば」と、意気込みを見せました。

 獅童が長年温めてきた構想がかたちとなった「オフシアター歌舞伎」。5月11日(土)~5月17日(金)天王洲 寺田倉庫5月22日(水)~29日(水)歌舞伎町 新宿FACEでの公演です。チケットの詳細は、それぞれの公演情報をご確認ください。

2019/03/25