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玉三郎が語る、南座「坂東玉三郎 世界のうた」

玉三郎が語る、南座「坂東玉三郎 世界のうた」

 7月3日(水)・4日(木)に南座で開催される、「坂東玉三郎 世界のうた」に出演の坂東玉三郎が、公演に向けて意気込みを語りました。

南座での初めてのコンサート

 5月18日(土)から始まる熊本の八千代座での公演を皮切りに、5月28日(火)・29日(水)、東京の日生劇場での公演を含め、全国4会場で開催される、コンサート「坂東玉三郎 世界のうた」。新開場した南座へは今年3月「坂東玉三郎特別公演」で出演していますが、新しくなった南座への感想は、「歌舞伎座も新開場して出演した際、昔と変わらないんじゃないかと感じました。客席から見ても変わらなかった。南座も、ほとんど(以前のものと)変わりません」。南座で玉三郎がコンサートを行うのは、新開場をする前を含めても、今回が初めてです。

 

 発声の勉強をきっかけに始めたコンサートは、「思い出のスタンダード」、「世界の旅」、「越路吹雪」に続き、「世界のうた」で、大きく分けると4演目めとなります。「歌舞伎でも、お客様の前でないと出ないものがあるんですよね。そんな流れから、皆様の前で歌ったらどうだろうと。自分も楽しくやり、お客様にも楽しんでいただく時間のなかで、自分の声に向き合えれば、ということで」コンサートを始めました。「声を出す、ということは、女方も、昆劇も、あるいはスタンダードなシャンソンも、ミュージカルナンバーも、究極的には同じなんです」。

 

 現在、コンサートに向けて稽古を重ねている最中という玉三郎は、「(曲を)選んでる時が一番楽しく、稽古が始まると苦しく、幕が開く前に緊張します。特に、アレンジができてきて音楽稽古の時が一番苦しいですね。芝居でもそうです。大役に向かっていくときに、台本を読んで、自分の衣裳なりかつらなり、決まっている配役のなかでこういう風にできるんだろうと思って、意気揚揚と胸をふくらまして、いざ稽古場へ行ったら全然できないことがあります」と、稽古の大変さを語りながら、「でも、乗り越えないと幕が開かない」と、気合を込めました。

 

玉三郎が語る、南座「坂東玉三郎 世界のうた」

音楽は私にとって必要だった

 音楽は「大好き」と強調した玉三郎は、今まで、「いろんなジャンルを聴きました」。あまり関わりがなかったヨーロッパの音楽と絵画を「勉強したのが10代、(昭和39年に)玉三郎になってすぐです。絵というのは絵画だけでなくて舞台の絵。舞台がどうなりたいか、そこにどういう音楽がつくかは、絵と音楽でしか勉強できなかったんです。それで、無差別に聴きました。そのときに、ポピュラーのシャンソンもクラシックも映画音楽も」聴きこみました。

 

 一番入りやすかった映画音楽や、シャンソンに対し、クラシックを聴き始めたのは、昭和52(1977)年、「27歳のときに、(新橋演舞場で)『オセロ―』のデスデモーナをやったとき。もちろんその前にも少し聴いてはいたのですが、デスデモーナという役をつかめるかというときに、ある先輩から、レナータ・テバルディのオペラの『オテロ』の「柳の歌」が素晴らしいから、聴いてイメージをつかみなさいと言われました。それで、テバルディの「柳の歌」を聴いて、そこから本格的に入ってきました」。

 

 「自分とかけはなれたもののイメージをつかむ。そうすると、現実にとらわれないで夢がふくらんでいく。絵描きなり、音楽家なりがシェイクスピアからインスピレーションをもらって、自分の思い描いたその場面を音楽や絵にしていく。それと同じように、(彼らの作品を)見ながら、ああ花の飾りってこうなんだ、ドレスってこう水に浮かんだとき、どこかがこういうふうにふくらむんだとか。そこでデスデモーナの衣裳とかたたずまいを想像するのではなくて、心のなかに吹いてくる風を理解するんです」。発想を飛ばす、「そういう意味で私にとって音楽が必要だった」と明かしました。

 

選んだのは思いが重なる曲

 今回歌う「誰もいない海」は、幼少の頃、夏休み、冬休みを過ごしていた海へ、大人になりまったく行けなくなったときに、「海の曲は、私にとってはなぜか外に行ける、夢をもてる、そのときがよみがえってくる」手段のひとつであり、「日本の曲で、日本の歌詞で付いていれば、皆様にも分かっていただけるだろうと思う。特に井上陽水さんのこの曲の歌詞は、非常に抽象的で、“飛べる”曲」だから選んだとのこと。今回のコンサートでは日本の曲も多く登場します。

 

 また、同じく歌う「星に願いを」は、1950年代にテレビの『ウォルトディズニーアワー』のオープニングを飾る音楽で、そのメロディを聞くと、「私の行ったことのない夢の国、いわゆる手の届かない現実にない国」へ行くことができたと語った玉三郎。このように、一曲いっきょく丁寧に選んだ、今回のコンサートで歌う曲は、20曲。「思いが重ならなくて、歌えないと思う曲は選曲しない。やっぱり歌詞なり、曲なりが自分にフィットしたものでないと選曲できない」と、玉三郎は言います。

 

 世界の歌を、全曲日本語の歌詞で歌うのは、「違う国の音楽を聴いたときに、メロディもニュアンスも違うけれども、人間の魂を訴えてる、音楽で訴えている魂ってこれなんだと思いました。違うものを聴くことによって邦楽が聞こえてくるときがあるんです。だから、ひょっとすると、私はこういう世界の曲を聴きながら、邦楽的に理解しているのかもしれない。だから(その国の)言語で歌わないんです」。

 

 「私のなかで、音楽的には、芝居も、歌も、それから古典も、地唄も、義太夫も、長唄も、同じ解釈しかできなかったんです。私にとっては日本語なんです。やっぱり、(母国の)言語でないと歌えない。聴いている人たちの母国語でないと聞こえないのではないか」と、英語で歌うのも素敵なんだけど、と付け加えながらも、込められた思いを明かしました。

 コンサート「坂東玉三郎 世界のうた」は5月18日(土)~7月14日(日)まで、全国4会場で開催。南座での公演は7月3日(水)・4日(木)に行われます。チケット詳細はこちら

2019/05/17