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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」初日開幕

 

 8月9日(金)、歌舞伎座で「八月納涼歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 令和最初の「八月納涼歌舞伎」。第一部は時代物の名作『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』で始まりました。今回、七之助が女方の大役、政岡を初役で勤めます。重厚な義太夫節が響くなか、御簾が上がると現れる、政岡と、勘太郎の千松、長三郎の鶴千代の姿。命を狙われる幼い鶴千代を守るため、自らの手で茶釜を用いて茶道のお点前に則り政岡はご飯を炊きます。この「飯炊き(ままたき)」は、演者にとって難度が高いといわれる場面です。

 

 三人しかいない空間に穏やかなひと時が流れますが、扇雀演じる栄御前の到着により空気は一変。健気にも身を呈して鶴千代を守ろうとした千松が幸四郎の八汐になぶり殺される場面では、すすり泣く声が上がるほどです。御家横領を企む幸四郎2役目の仁木弾正が、その正体を現し、おどろおどろしく花道を引っ込むと、緊張感が客席中に走りました。

 

 続いては『闇梅百物語』。お馴染みの妖怪たちが次から次へと登場する、納涼にぴったりの舞踊で、賑やかな雰囲気が歌舞伎座を包み込みます。真っ暗な舞台に浮かび上がる骸骨と、百鬼夜行の読本を手に軽やかに踊る読売の2役を、幸四郎が初役で勤めます。扇雀の雪女郎が艶やかに、彌十郎の狸は楽しげに、くすりと笑いがあふれる、変化に富んだひと幕となりました。

 第二部は納涼歌舞伎らしさが詰まった、『東海道中膝栗毛』。猿之助の喜多八と幸四郎の弥次郎兵衛の旅が、いよいよ4年目を迎える今作は、意外な展開で始まります。再び伊勢参りへ向かおうとする二人ですが、今年もそう簡単に事は運びません。空から海へ、さらには山の中へと舞台を変え、災難に巻き込まれながら、珍道中を繰り広げます。

 

 染五郎と團子は雲助の染松、團市として登場。物語を運ぶ役割を果たします。また、七之助が七化けお七として登場したり、中車が鎌川霧蔵でカマキリを彷彿とさせる姿で登場したりと、今年も大勢の出演者で舞台を盛り上げ、客席からは笑い声が絶えません。大滝の中での本水を使った立廻りに、舞台上での花火を使った演出もあり、まさにお祭り騒ぎ。同時宙乗りで二人が浮かび上がると、会場は大きな拍手に包まれました。

 第三部は『新版 雪之丞変化』。玉三郎がストーリー構成、演出を見直し、自身で雪之丞を演じることで、これまでに幾度も映像、舞台化されてきた『雪之丞変化』が生まれ変わります。幕が開くと、まず驚くのはそのシンプルな舞台装置。そこに今作のために撮り下ろされた映像や、これまで演じられてきた玉三郎の舞台映像が映し出され、舞台上で進行する生身の俳優の芝居と絡み合います。舞台から映像、映像から舞台へと物語を繋いでいき、徐々に描き出されていく雪之丞の心情。そのスピード感、美しさに観客は息をのみ、引き込まれていきます。

 

 雪之丞と同じ一座の役者、秋空星三郎を勤めるのは七之助。歌舞伎の名場面を二人で演じてみせたり、先輩として雪之丞を引き上げ、やがて病魔に侵されながらも、雪之丞を導きます。中車は、雪之丞の師である中村菊之丞や盗賊闇太郎など、5つの役を勤めますが、今回は映像も使いながらそれぞれの役柄を演じ分け、雪之丞と対峙します。まるで雪之丞の心のなかを映すような静謐な舞台面のなか、『元禄花見踊』では客席が明るい光にあふれ、華々しい幕となりました。

 歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」は27日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。 舞台写真は舞台写真館(スマートフォンはこちら)でお楽しみください。

2019/08/13