「坂東玉三郎 中国・昆劇合同公演」最終回

湖廣会館を訪ねて

 5月15日に千穐楽を迎えた「坂東玉三郎 中国・昆劇 北京公演」。初日の様子は 歌舞伎美人ニュースでもご紹介いたしましたが、中国のお客様のみならず、日本からも大勢のお客様が観劇に訪れ、北京で観る昆劇の魅力を堪能されていました。

 特に会場となった湖廣会館の美しさは感動的でさえあり、玉三郎が演じる舞台に新たな魅力を注ぎこむ雰囲気さえ持っています。今回のニュースでは、この湖廣会館とその周辺をご紹介しましょう。

湖廣会館を訪ねて

 湖廣会館は、清代に建築された約180年の歴史を持つ建物です。1912年には、孫文がここで国民党を結成したという歴史的な一面も持っています。劇場内は、清代の様式美を今に伝え、普段は京劇が上演されることもあり、中国の演劇を楽しみにたくさんの観光客が訪れます。敷地内には北京戯曲歴史博物館もあるので、北京を訪れた際に足を運んでみてはいかがでしょうか。

 湖廣会館は北京市街の南部に位置しています。この辺りは、かつて内城では存在が許されなかった芝居小屋や遊興の店が集中していたところでもあり、現在もその名残が感じられます。そんな下町の風情が溢れる街に少し足を伸ばしてみました。

湖廣会館を訪ねて

 湖廣会館から北へ10分ほど歩くと、琉璃廠文化街に着きます。ここは、書画、骨董、文具類の店が軒を並べ、通りは清代の町並みを復元しており北京名所の一つにも数えられています。町並みの美しさを楽しむと共に、骨董品に歴史のロマンを訪ねてみれば、緩やかな時の流れを感じることができます。

湖廣会館を訪ねて

 琉璃廠文化街から少し路地に入ってみました。今、北京郊外はマンションの建設ラッシュ。高層マンションが数多く建てられ近代化が進んでいます。しかし、ここはまさに下町。町には自転車にのった物売りの声が響き、路地に椅子を出して話し込んでいる人々も多く見受けられます。家と家を縫うように小さな路地が走り、ちょっとした迷路。いかにも庶民の街といった風情が感じられます。

湖廣会館を訪ねて
▲工事の進む前門大街(写真・左)と大柵欄(写真・右)

 ここからさらに10分ほど東に歩くと、北京の浅草(!)と言われる大柵欄に到着します。明清代、通りの両端に柵を設けて夜間の通行を禁止したために、この名が付いたといわれています。当時は色町があり、商店や茶館、演劇場がひしめく北京一の繁華街だったそうです。まさに江戸の猿若町・・・そんな思いが重なります。あいにく、大柵欄やその道に続く、北京一の繁華街、前門大街は北京オリンピックにあわせて大工事中。今まさに、新しい街に生まれ変わろうとしています。

 新しい町並みに変わる北京に少し寂しさを感じながら、湖廣会館にもどってくるとそこは、美味しいラーメンが1杯5元(80円くらい)で食べることの出来る庶民的な町です。夜になると若者たちが安くて美味しい食を求めて集まり、露店のような店先で舌鼓をうちながら遅くまで過ごしていました。またいつか訪れたいと思う・・・今も残る下町の風情に心を暖めてもらった気がします。

湖廣会館を訪ねて