公平

きんぴら

 金平とも書き、坂田金時の子で江戸浄瑠璃に登場する架空のヒーロー。幼いながら超人的な力を発揮する豪傑ぶりで人気を博し、寛文年間(1661~73)頃に江戸で流行した金平浄瑠璃の登場人物として大変もてはやされました。ちょうどその頃に初舞台を踏んだ初代市川團十郎は坂田金時や公平役で評判を取り、そこから荒事を創始し芸風を確立して行きました。前髪立ちの若者でめっぽう強いスーパーマンという設定は『暫』の鎌倉権五郎に受け継がれ、荒事の典型として完成されて行きます。

 現在、公平物の演目自体は残っていませんが、『極付 幡随長兵衛』の幕開きには劇中劇で『公平法問諍(きんぴらほうもんあらそい)』が上演され、いかにも古風な舞台面が現出します。この場面では、客席がそのまま江戸の芝居小屋に見立てられ、観客の間からさりげなく現れる長兵衛や、花道の上から客席に向かって声を掛ける舞台番など、江戸にタイムスリップした楽しさが味わえます。
(K)



解説

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