歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



こども歌舞伎スクール寺子屋 特別企画 歌舞伎、たのしい!

第二回

松本 錦成

部屋子として歌舞伎の世界に飛び込んだ若き俳優たちのインタビューを5回にわたってお届け。第二回は、高麗屋一門で修行を積む松本錦成さんです。

部屋子(へやご)とは?小さいうちから歌舞伎俳優のもとで、芸だけでなく楽屋での行儀など、必要なことを教えてもらう立場の俳優です。実際には、一般の家のお子さんが子役で活躍し、将来が期待されて部屋子となる例がほとんどで、大きくなってから芸養子や養子に迎えられることもあります。

インタビュー・文/松竹こども歌舞伎スクール「寺子屋」事務局
写真/松竹写真室 プライベート写真/ご本人提供 構成/歌舞伎美人編集部

松本 錦成

「歌舞伎ってかっこいい!」、これにつきます

小学五年生の夏の林間学校で時計づくり。日本舞踊のお稽古を始めた頃

 姉が参加した伝統歌舞伎保存会の「小学生のための歌舞伎体験教室」発表会で、『寿曽我対面』を観たのが歌舞伎との出会いでした。小学二年生でした。豪華な衣裳をつけてお化粧をしてせりふを言って拍手もいっぱいもらって、とにかくかっこいい! すぐに歌舞伎に憧れました。もともと目立つことが好きでしたので、こんなにかっこいいものはないと思ったのです。

 その後、僕自身も別の歌舞伎教室に参加し、稽古を頑張ったご褒美として修了時に、好きな歌舞伎俳優さんに会わせてもらえることになりました。迷わず若旦那(染五郎)のお名前を挙げ、初めてお会いした若旦那に、その場で「歌舞伎がしたいです」と言ってしまい…。驚いてらっしゃいました(笑)。すぐにというわけにはいかないので、と、ご紹介くださった日本舞踊などのお稽古を始め、少しずつ勉強させていただくようになりました。

初舞台の胡蝶役で「高麗屋!」…感動しました

平成20年2月歌舞伎座『春興鏡獅子』胡蝶の精。初舞台に当たり、若旦那に名前をつけていただきました

 11歳のときにお声がかかって、『春興鏡獅子』(平成20年2月歌舞伎座)で初舞台。初代松本白鸚二十七回忌追善で、若旦那が小姓弥生後に獅子の精を初役で勤める舞台でした。名前も頂戴してうれしくて、お稽古の大変さより緊張より、とにかく楽屋に行くことが楽しくて仕方がなかったです。舞台上では必死でしたけど、「高麗屋!」と大向うから声がかかったのは、本当に言葉にならない感動でした。

 1年後、部屋子のお話が出て、若旦那から「将来を決める大事な判断だから、歌舞伎を離れてしっかり考えるように」と1カ月の猶予を与えられました。考えるまでもなく「やった!!」という気持ちだったので、お休みがもどかしく、早く歌舞伎に関わりたい一心でした。ただただ歌舞伎が大好きだった僕の思いを受け止めてくださって今があること、感謝しかありません。

 部屋子披露の『髪結新三』の丁稚(平成21年6月歌舞伎座)では、「高麗屋の部屋子になるんだ」というせりふも特別につけていただき、堂々と言わないと、と心して勤めました。

若旦那と二人で踊った『お祭り』

平成22年5月新橋演舞場『お祭り』若い者幸太。「若旦那の鳶頭染吉と!」

 多くのお役を頂戴しましたが、『お祭り』(平成22年5月新橋演舞場)で若旦那と共演させていただいたことは特に印象深いです。踊りが大好きで、大好きな若旦那と二人で踊れるのですから、本当に楽しくて幸せでした。初めて立廻りをさせていただいた『忠臣蔵』「十一段目」(平成25年12月歌舞伎座)もうれしかったです。一門の高麗五郎さんに立廻りの型を教わり、お役がいただけるよう稽古しています。

 せりふはまだまだ勉強すべきことが多く、苦労しています。『不知火検校』(平成25年9月新橋演舞場)の正の市は、物語の発端になる大切なお役でせりふも多く、すごく緊張しました。旦那(幸四郎)がかつてなさったお役というプレッシャーも大きく、入門して初めて若旦那のいらっしゃらない一座だったため心細くもありましたが、旦那に「せりふは気持ちだよ」とお教えいただき、一所懸命勤めました。

 伝統歌舞伎保存会の研修発表会(平成26年10月国立劇場)では『引窓』の三原伝造、初めて大人のお役を頂戴しました。実は、お稽古の前日が高校最後の運動会だったのですが、すごいどしゃ降りで、びしょ濡れになりながらも翌日のお稽古に備えることで頭がいっぱい。もちろん舞台では全力を尽くしましたが、後から映像を見るとできておらず、稽古不足を痛感しました。

『勧進帳』と『熊谷陣屋』

 11月には、若旦那が初役で弁慶を勤める『勧進帳』で、花道の御幕を上げる役目をいただきました。若旦那の弁慶にかける思いや緊張感をひしひしと感じながら、自分には何ができるだろうと考えながら勤めておりました。一門として、僕の成果が旦那、若旦那にご迷惑をかけることもありますから、少しでもそのようなことがないように、今はお稽古あるのみです。

 ご注意いただいたことができないと本当に悔しくて、もっとしっかりやらないと、といつも肝に銘じています。でも、もともとが目立ちたがりのせいもあってか、大変なときも楽しい気持ちのほうが強い、というより楽しむことを自分の中心に置いています。それは、やはり演じる側が楽しんで勤めないと、お客様にも楽しんでいただけないと思うからです。

 憧れのお役もあります。『熊谷陣屋』の熊谷次郎直実。立廻りがなくてもかっこいい、そう思えたのは、若旦那が初めてなさったときに(平成22年5月新橋演舞場)、楽屋でたくさんお話をうかがったからです。せりふや芝居に込められた直実の心情、心持ちを教えていただき、歌舞伎役者としてぜひ演じてみたいと思いました。歌舞伎は本当に奥が深いです!

一問一答!

錦成さんの素顔

「勉強は嫌いです、歌舞伎のほうがずっと楽しいので(笑)。楽屋でも先輩方の芝居のお話に聞き入っています」という錦成さんは現在、高校三年生。学業と歌舞伎の両立を目指しています。
学校生活やプライベートのお話をてら子、やー坊が聞いてきました!

てら子
歌舞伎以外で好きな舞台芸術は?
劇団☆新感線
「はっきり言って若旦那の影響です。DVDでの鑑賞も含め、全作品観ています。派手な立廻りが本当にかっこいい!」
やー坊
思い出に残る学校行事は?
今年の文化祭
「男子校なので、普段女子と接することが少ないのですが、文化祭では女子がたくさん来てテンションが上がりました! ギター部員としてホールで演奏し、クラスの出し物では接客をして、まるで違う世界にいるようでした。ここから先の詳しいことは内緒です(笑)」
てら子
小さい頃は、どんな夏休みを?
おじいちゃんの家へ
「夏休みは毎年、長野県松本市の祖父の家へ行っていました。毎朝、畑に野菜を採りに行くのが日課で、とっても楽しかった!」
5歳の夏、ミニトマトの収穫中、「おいしいよ!」
やー坊
リフレッシュ方法は?
友達と遊ぶこと
「音楽や映画鑑賞、ダーツ、ゲームなど、普通の学生の遊びをします。クラシックギターも好きで、実は歌舞伎より長く、かれこれ10年くらいやっています」
高校ではギター部。写真は2年くらい前、バッハでも弾いているところかな…
てら子
自分の思う長所、短所は?
長所は、集中力があること。短所は、失くし物が見つけられないこと。
「一つ好きになると、それを突き詰める集中力には自信があります。お役にも集中してなりきるタイプだと思いますが、集中しすぎて周りが見えなくなることも…。視野を広げたいな、と思います」
「この頃は整理整頓しすぎて見つからないということも。あ、楽屋はきちんとしています!」

錦成さんからのメッセージ


歌舞伎が好きな皆さんへ

「好きなら続けられる!」
「好き」という気持ちを大切にしてください。
何かにつまずいたり、壁にぶつかったりして落ち込んだとき、原点に戻って考えるのは、自分が「好き」か「好きじゃない」かという気持ちです。そこが根本的に違えば終わり、でも、自分が好きでやりたいとわかれば、どんなことがあろうとやっていけると思います。
歌舞伎では何百何千という目が耳が、自分に向けられます。しかもすごい衣裳を着た自分に…。もう最高の舞台です!

松本錦成

まつもと きんせい
高麗屋。松本幸四郎の部屋子。平成8年12月11日生まれ。
20年2月歌舞伎座『春興鏡獅子』胡蝶の精で松本錦政の名で初舞台。
21年6月歌舞伎座『髪結新三』紙屋丁稚長松で松本錦成を名のり部屋子披露。

こども歌舞伎スクール寺子屋 特別企画「歌舞伎、たのしい!」
第三回は、市川福太郎さん。12月4日(木)掲載予定です。

  • 第一回 中村 梅丸
  • 第三回 市川 福太郎
  • 第四回 上村 吉太朗
  • 第五回 中村 鶴松
歌舞伎アカデミー こども歌舞伎スクール 寺子屋

こども歌舞伎スクール寺子屋

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