歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



明治座 「明治座 五月花形歌舞伎」『男の花道』知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 市川猿之助

澤瀉屋の色を出した『男の花道』に

 ――猿之助さん版とこれまでの『男の花道』の違いがあればお教えください。

 「金谷宿」の場面の前に序幕として大坂道頓堀・中の芝居の「芝居前」を書き足しました。土生玄碩が歌右衛門の芝居を見て目が悪いと指摘して騒ぎとなる場面です。玄碩先生がなぜ金谷宿で歌右衛門の目を治そうと思ったかがわかりやすいように、より劇的になるようにと思いました。

 『男の花道』の原案を書かれた小國英雄さんのご遺族が、「実は、小國も序幕にあの芝居を書きたかったんです。本人が見たら、喜ぶでしょう」とおっしゃってくださいました。起承転結をきちっとさせるのは、復活上演などで育んだ澤瀉屋の色です。

 ――演出・補綴は石川耕士さんですね。

 初演の台本も演出もよくできていたため、今回直す必要がないので助かりました。石川さんは、役者がわかっていて、当て書きができて、せりふがうまくて、物語がうまい。(見物に親切、役者に親切、座元に親切の“三親切”を実践していた)河竹黙阿弥のような人です。

 ――見どころも多いですね。

 「櫓のお七」のあとは歌右衛門が客席の中を通りますし、盛り上がりますよ。中車さんの土生玄碩と絡む場面も面白いと思います。(片岡)秀太郎さんにご出演いただけるのも楽しみですし。

明治座「明治座 五月花形歌舞伎」

平成27年5月2日(土)〜26日(火)

公演情報

男の花道おとこのはなみち

加賀屋歌右衛門 市川 猿之助
土生玄碩 市川 中 車
田辺嘉右衛門 片岡 愛之助
山田春庵 市川 男女蔵
加賀屋歌助 中村 壱太郎
山崎順之助 市川 猿 弥
按摩杢の市 市川 弘太郎
松屋忠兵衛 市川 寿 猿
富枝妹雪乃 市川 笑 也
加賀屋歌五郎 中村 亀 鶴
加賀屋東蔵 坂東 竹三郎
田辺妻富枝 市川 門之助
万八の女将お時 片岡 秀太郎

次世代につないでいくために上演する

 ――衣裳などはいかがでしょう。

 長谷川先生と同じ柄でいたします。先生の写真と竹三郎さんの記憶を照らし合わせ、そのとおりのものを着ます。最後の黒の衣裳だけは、長谷川先生がお召しになったものが残っていました。衿の幅まで綺麗に見えるように工夫してある、素晴らしい衣裳です。大阪で長谷川先生の衣裳を仕立てていらした方が保存されていたものをお借りします。

 先生は映画の手法を芝居でも使い、鬘(かつら)の生え際から衣裳の柄や照明に至るまで細心の注意を払っていらしたんです。

 ――4月は中日劇場で『雪之丞変化』ですね。こちらも長谷川さんが得意にされた演目です。

 長谷川先生も大川橋蔵さんも、歌舞伎界から映画界に入って大スターになられた方です。ところが、今は時代劇のスターがほとんどいなくなり、お二人の得意とされてきたようなお芝居を商業演劇で上演する機会も少なくなりました。やらないと滅んでしまいます。それではもったいない。

 古典には守る人がいますが、こういうお芝居にはいません。ゆくゆくは今回もご一緒する壱太郎さんがやってくださるでしょうから、そういった次世代の人たちに大切に受け渡すつもりで、上演させていただきます。

※澤瀉屋の「瀉」のつくりは正しくは“わかんむり”です。

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