歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



南座「當る亥歳 吉例顔見世興行」『義経千本桜』「木の実」「すし屋」
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 片岡仁左衛門

悪餓鬼だけれど可愛いのが権太

 ――江戸と上方の権太の違いについてはいかがでしょう。

 江戸は何でも格好よさが大事です。『助六』にしても、原本では助六が、意休と何かあっただろうと痴話喧嘩をしたりしますが、そういう箇所は全部カットしています。『御所五郎蔵』でも、後をカットしているし、『源氏店(与話情浮名横櫛)』の与三郎も「赤間別荘」をやることは少ないです。とにかく格好のいいところだけを抜粋します。権太も江戸はすっきりとしています。ちょっと上方とは色が変わってきます。

 ――仁左衛門さんは、大和のごろつきとして演じられるわけですね。

 権太はよい家の出で、ごろつきとは違います。悪餓鬼だけれどもやんちゃで可愛い子を関西では権太といいますが、この役は、まさに大人になっても、そういうところから抜け出せない男として私は演じています。

 ――権太と弥左衛門の関係も微妙ですね。

 父親の悪態をつきますが、本当は好きで、父親の窮地を救って自分の勘当も許してもらいたさに、自分の嫁と息子を犠牲にしてしまうんです。でも、あんまり深く掘り下げていくと無茶な話になってしまいます(笑)

 ――若葉の内侍と六代君に化けた妻子を梶原が引き立てていくのを見送って、ほっとして真相を報告しようとしたところで、権太が弥左衛門に刺されてしまいます。

 梶原を見送って、「ああうまくいった、誉めてもらおう」というところでぶすっと刺されてしまう。もうちょっとずれていたら助かったのに、少しの歯車のズレで、人間の運命が大きく変わってしまう。ドラマ性が強調されると思うんです。あれも、初日が開いて何日目からか、自然とそれまでのやり方から変わりました。恐らくあのやり方は、今のところ私だけだと思います。ああ、もうちょっとで命助かったのに、可哀そうに、と感じていただけたらと思います。

南座「當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」

平成30年12月1日(土)~26日(水)

『義経千本桜』「木の実」「すし屋」
(よしつねせんぼんざくら このみ すしや)

いがみの権太 片岡  仁左衛門 
弥助実は三位中将維盛 中村  時 蔵 
お里 中村  扇 雀
若葉の内侍 片岡  孝太郎 
主馬小金吾 片岡  千之助
猪熊大之進 片岡  松之助 
弥左衛門女房お米 坂東  竹三郎 
権太女房小せん 片岡  秀太郎 
鮓屋弥左衛門 市川  左團次 
梶原平三景時 中村  梅 玉 

六代君でも出演

 ――昭和26(1951)年1月には大阪新歌舞伎座で「すし屋」の六代君もなさっていますね。

 (二世)鴈治郎のおじさんの弥助、寿海のおじさんの権太でした。当時は香水をつけるのが流行りで、鴈治郎のおじさんが、権太の前を通るときに、いい匂いがするようにと僕に香水をかけてくださいました。

 ――今回、変更してみようと思われるところはありますか。

 こう変えてみようとは思いませんが、やっていくうちにきっと自然に変わっていくでしょう。その場その場で変わったり、ひと月のなかでも変わっていくと思います。

 ――今年最後の舞台になります。

 いい権太で締めくくりたいですね。

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