歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」 平成29年度(第72回)文化庁芸術祭参加公演  日印友好交流年記念
新作歌舞伎 極付印度伝 マハーバーラタ戦記

出演者の言葉

出演者の言葉

中村七之助
鶴妖朶王女(ヅルヨウダ)

菊之助さんのこだわりや思いが込められ、歌舞伎愛に満ちた素晴らしい新作歌舞伎です。
鶴妖朶は、原作では男性ですが、今回の脚本では女性として描かれたことで、このキャラクターを際立たせていただきました。「恐れが生んだ妄念」とせりふにもあるように、鶴妖朶は根っからの悪ではない。悲哀を秘めた魅力的な役です。何よりテーマ曲がかっこいい! 稽古場からテンションが上がりました。

片岡亀蔵
道不奢早無王子(ドウフシャサナ)

インドの「今を生きるべし」という宗教概念を強く感じます。「マハーバーラタ」のテーマが揺らがないので、お稽古のなかで細かい工夫を皆で考えることができました。鶴妖朶(ヅルヨウダ)が女性となったことで、道不奢早無がやりやすくなったというか、策士の長女に、実行する弟、という構図が自然に描けるように思います。男同士だったらきっと、もっと血生臭くなってしまいますよね。

坂東彦三郎
百合守良王子(ユリシュラ)

五王子は一体感を大切に話合いながらやっています。名のりの見得はみんな手がパー(五本指)なんです。お互いの個性を知っているし、関係性が重なるところがあり、役づくりせずとも自然にいいバランスで演じられます。賭博の場面は、展開の大きなきっかけではありますが、百合守良には深い考えはないんですよね。作品も、難しいことは考えずに楽しんでいただきたいです。

坂東亀蔵
風韋摩王子(ビーマ)

とにかく怪力の風韋摩。兄(百合守良)のために戦って戦って…、かなりハードです。所作事のなかにも立廻りがありますし、大詰は迦楼奈(カルナ)との一騎打ちの後、我斗風鬼写(ガトウキチャ)との芝居があって、鶴妖朶(ヅルヨウダ)との死闘、ちょっとでも気を抜くと置いて行かれてしまうので。武器も大きく、動きが速くて激しいのですが、流れず形をきれいに観ていただけるよう頑張っています。

尾上松也
阿龍樹雷王子(アルジュラ)

阿龍樹雷はインドでも英雄とされ、迦楼奈と相対する役で、大詰ではクライマックスで激しい立廻りをします。珍しい馬車(戦車)や両花道を使っての立廻りはお客様との距離も近く、迫力を感じていただけるのではないでしょうか。迦楼奈(カルナ)の慈愛と阿龍樹雷のパワーとの対比、そして深い兄弟愛を描き出せればと思います。歌舞伎とインドとの見事な融合をぜひご覧ください!

中村萬太郎
納倉王子(ナクラ)
我斗風鬼写(ガトウキチャ)

五王子の絆を大切に演じています。鶴妖朶(ヅルヨウダ)の別邸は五王子の日常の空気感があり、個人的に好きな場面です。沙羽出葉(サハデバ)と双子らしさを出していこうと、せりふも工夫しました。二人一緒の場面は兄たちを支える連携を強めていきたいと思います。我斗風鬼写(ガトウキチャ)は魔物ですが父を助けたい一心。迦楼奈(カルナ)がシャクティを使うべき存在に見えるかが課題です。

中村種之助
沙羽出葉王子(サハデバ)

沙羽出葉は五王子の末っ子で、あまり主張をするほうではないですが、兄たちを尊敬し、自分の役割をちゃんと理解しています。大詰で「何もない奴だと思っていた」と言われますが、道不奢早無(ドウフシャサナ)とは違う兄弟の想い方があるということが、13年越しの決戦の姿で出せればと思います。立廻りでは歌舞伎の立廻りのなかにインドの伝統的武術のテイストをとり入れているので、そこにも注目していただければ。

中村梅枝
汲手姫(クンティ)
森鬼飛(シキンビ)

汲手姫は歌舞伎でいえば赤姫のような役どころ。しかも物語の発端でもあるので、品よく、またこのお芝居の世界にお客様を引き込めるよう勤めたいです。
森鬼飛(シキンビ)は劇中唯一の所作事。魔物ですが美しく妖艶に恋を表現したいと思います。

中村児太郎
弗機美姫(ドルハタビ)

弗機美姫は台本を読んだときに、とても感情的ではっきりとものを言う印象だったので、そこを演出の宮城先生にうかがったら、原作ではすごく気の強いお姫様だと教えていただいて。お姫様ではありますが、言葉もしぐさも強く、鶴妖朶(ヅルヨウダ)たちへの反抗心などもはっきりと表現するようにしています。登場はインドらしく象に乗って…、このような歌舞伎、今までになかったですよね。

撮影=松竹写真室