歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」 平成29年度(第72回)文化庁芸術祭参加公演  日印友好交流年記念
新作歌舞伎 極付印度伝 マハーバーラタ戦記

『極付印度伝
マハーバーラタ戦記』
一問一答

『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』一問一答

 
迦楼奈(カルナ)の金の耳輪にご注目ください。

『マハーバーラタ戦記』について、演じる役や、より詳しい内容を菊之助に聞きました!

Q1 菊之助さんが演じるのはどのような人物ですか。

 太陽神と人間の女性 汲手(クンティ)姫の間に生まれた迦楼奈(カルナ)という人物、つまり神様と人間のハーフです。

Q2 神様と人間のハーフ! 何か特徴的なことはありますか。

 金の耳輪をつけています。この耳輪さえあれば迦楼奈(カルナ)は向かうところ敵なしです。

Q3 迦楼奈(カルナ)の誕生には大きな意味がありそうですね。

 そこには人間界の争いをやめさせたいという太陽神の願いが込められています。つまり迦楼奈(カルナ)はその使命を背負った人物です。

 大義を尽くすために、信念にもとづいて一所懸命突き進んでいくのですが、その信念によってあらぬ方向に運命が傾いてしまい…、ここからは舞台を見てのお楽しみにさせていただきます。

Q4 ほかにどのような人物が登場するのでしょうか。キーパーソンを教えてください。

 まず迦楼奈(カルナ)の運命と行動に深く関わる鶴妖朶(ヅルヨウダ)王女。

 それから迦楼奈(カルナ)の宿命のライバルとして登場するのが五王子の一人、阿龍樹雷(アルジュラ)。阿龍樹雷(アルジュラ)の婚約者で五王子とも密接に関わることになるのが弗機美(ドルハタビ)姫で、姫には象に乗って登場してもらうつもりです。

 そして、哲学的な言葉で物語を動かすこととなる仙人久理修那(クリシュナ)、と、そのほかにもたくさんのキーパーソンがいます。

Q5 たくさんの神様が出てきますね?

 実際にインドでは、寺院やガンジス川で熱心に祈りを捧げている人々を見て、聖なる場所を通じて神の存在が近いんだということを感じました。

Q6 ほかにも、インドの風土や作品からどんなことを感じますか?

 宗教、哲学、人生観…、「マハーバーラタ」からはいろいろなことを考えさせられます。

カルナとアルジュナ。宿命の二人。カルナの後ろには養父のアディラタ。

Q7 物語の舞台も日本?

 奈良時代あたりの日本人が、インドの国を想像するとどのようになるか、という世界観でつくっています。

Q8 せりふは現代語ですか?

 さまざまな登場人物がいるので、古語を使い、格調のある言葉にする場面もありますが、一方では平易な言葉も混ぜて、初めてご覧になる方も聞きとりやすいように工夫していただいています。

Q9 時代物と世話物と、両方の要素があるのですね。

 舞踊もあります。五王子の一人である風韋摩(ビーマ)は密林で、森鬼飛(シキンビ)という半分人間半分魔物という娘に出会うのですが、そこは所作事を考えています。

Q10 衣裳は?

 基本的には古典歌舞伎の衣裳ですが、神様に関しては『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』で衣裳を手がけられた衣裳デザイナー、高橋佳代さんにお願いしています。

Q11 古典と現代的な要素とが融合した舞台となるのですね?

 音楽も、作調の田中傳左衛門さん、作曲の杵屋巳太郎さん、舞台音楽家の棚川寛子さんにご協力いただき、邦楽器とパーカッションを融合させられたらと思っています。

Q12 演出の宮城さんはどのようにおっしゃっていますか?

 「古典の歌舞伎の様式を大事にしたい」とおっしゃってくださっています。あくまでも歌舞伎の手法で古典歌舞伎をつくりたいというのが共通の思いです。

Q13 それをどのようにして具現化されていくのでしょう?

 たとえば、五王子の名のりは、『白浪五人男』のようなせりふを七五調にしてあります。ほかにも登場人物や場面を歌舞伎の役柄や場面に落とし込んでいこうと思っています。

Q14 『NINAGAWA十二夜』から12年、これまでの経験が生かされますね?

 今こうして新作歌舞伎をつくる機会をいただいたのは、12年の間に自分がどれだけ成長したかを問われているように思います。

Q15 改めて新作に対する思いをお聞かせください。

 インドの方が大切にされているマハーバーラタを日本の歌舞伎にさせていただくのですから、両国それぞれの方々に、そしてより多くのお客様に楽しんいただける舞台にしたいです。

取材・文=清水まり 撮影=加藤 孝
The Mahabharata, retold by Shanta Rameshwar Rao and illustrated by Badri Narayan. Copyright Orient Blackswan Pvt Ltd 1985. Used with the permission of the publishers.