『マハーバーラタ戦記』について、演じる役や、より詳しい内容を菊之助に聞きました!
太陽神と人間の女性 汲手(クンティ)姫の間に生まれた迦楼奈(カルナ)という人物、つまり神様と人間のハーフです。
金の耳輪をつけています。この耳輪さえあれば迦楼奈(カルナ)は向かうところ敵なしです。
そこには人間界の争いをやめさせたいという太陽神の願いが込められています。つまり迦楼奈(カルナ)はその使命を背負った人物です。
大義を尽くすために、信念にもとづいて一所懸命突き進んでいくのですが、その信念によってあらぬ方向に運命が傾いてしまい…、ここからは舞台を見てのお楽しみにさせていただきます。
まず迦楼奈(カルナ)の運命と行動に深く関わる鶴妖朶(ヅルヨウダ)王女。
それから迦楼奈(カルナ)の宿命のライバルとして登場するのが五王子の一人、阿龍樹雷(アルジュラ)。阿龍樹雷(アルジュラ)の婚約者で五王子とも密接に関わることになるのが弗機美(ドルハタビ)姫で、姫には象に乗って登場してもらうつもりです。
そして、哲学的な言葉で物語を動かすこととなる仙人久理修那(クリシュナ)、と、そのほかにもたくさんのキーパーソンがいます。
実際にインドでは、寺院やガンジス川で熱心に祈りを捧げている人々を見て、聖なる場所を通じて神の存在が近いんだということを感じました。
宗教、哲学、人生観…、「マハーバーラタ」からはいろいろなことを考えさせられます。
奈良時代あたりの日本人が、インドの国を想像するとどのようになるか、という世界観でつくっています。
さまざまな登場人物がいるので、古語を使い、格調のある言葉にする場面もありますが、一方では平易な言葉も混ぜて、初めてご覧になる方も聞きとりやすいように工夫していただいています。
舞踊もあります。五王子の一人である風韋摩(ビーマ)は密林で、森鬼飛(シキンビ)という半分人間半分魔物という娘に出会うのですが、そこは所作事を考えています。
基本的には古典歌舞伎の衣裳ですが、神様に関しては『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』で衣裳を手がけられた衣裳デザイナー、高橋佳代さんにお願いしています。
音楽も、作調の田中傳左衛門さん、作曲の杵屋巳太郎さん、舞台音楽家の棚川寛子さんにご協力いただき、邦楽器とパーカッションを融合させられたらと思っています。
「古典の歌舞伎の様式を大事にしたい」とおっしゃってくださっています。あくまでも歌舞伎の手法で古典歌舞伎をつくりたいというのが共通の思いです。
たとえば、五王子の名のりは、『白浪五人男』のようなせりふを七五調にしてあります。ほかにも登場人物や場面を歌舞伎の役柄や場面に落とし込んでいこうと思っています。
今こうして新作歌舞伎をつくる機会をいただいたのは、12年の間に自分がどれだけ成長したかを問われているように思います。
インドの方が大切にされているマハーバーラタを日本の歌舞伎にさせていただくのですから、両国それぞれの方々に、そしてより多くのお客様に楽しんいただける舞台にしたいです。
取材・文=清水まり 撮影=加藤 孝
The Mahabharata, retold by Shanta Rameshwar Rao and illustrated by Badri Narayan. Copyright Orient Blackswan Pvt Ltd 1985. Used with the permission of the publishers.