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玉三郎 シネマ歌舞伎『ふるあめりかに袖はぬらさじ』を語る

ふるあめりかに袖はぬらさじ

 平成19年12月、歌舞伎座でついに歌舞伎として初上演され、その豪華キャストの競演が大評判となった名作舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』がいよいよ5月31日、東京東銀座・東劇にて公開されます。(6月~7月、名古屋、大阪、京都、横浜、福岡にても順次公開予定。)

※予告篇はこちら

 『ふるあめりかに袖はぬらさじ』は、有吉佐和子の原作で、昭和47年の文学座公演で初演されて以来、杉村春子によるお園が当たり役として繰り返し上演され、昭和63年からは坂東玉三郎に受け継がれてきた名作舞台です。今回の舞台で9度目のお園を演じた玉三郎が、シネマ歌舞伎『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の魅力について語りました。

坂東玉三郎―――
 今まで、シネマ歌舞伎には『鷺娘』『日高川』そして『二人道成寺』と出演させていただき、今回、お芝居としては初めての『ふるあめりかに袖はぬらさじ』ということになりました。

 2時間40分と少し長いものになっていますが、映像として親しみやすい作品ですし、以前からこの作品が映画になるといいなと思っていました。カメラも通常の収録よりも台数を増やして撮影しています。昨年の舞台を楽しんでいただいた方にも、映画ファンの方にも観ていただければと思っています。私もぜひ映画館で観たいと思っております。

作品全体の印象について―――
 日本の根本的なところが、本当にある意味シニカルに描かれていて、日本の伝説というものは、ほとんどこういう風に出来上がったのではないかと思ってしまいます(笑)。本当に、近代の名作です。

 男達はみんな外に出て行くけれど、女達は廓から出ることが出来ず、外から来るものをどうやって受け入れていくか葛藤します。お園が水平線を眺めて想いをめぐらすのも、外に行けない女の物語だということなんです。

 喜劇なのか悲劇なのか、わからないところで、あれだけ楽しませながら、人間の深層心理を深く描いていきます。そして、最後にお園が女性としての本心を言う・・・不条理劇のようでありながら、非常に心情に訴える、とても素晴らしい作品です。

みどころ―――
 男達は、開国するか鎖国するか、命がけで議論していたのに、結局時が過ぎればどちらでも良くなってしまう。でも、どちらでも良くなってしまう事を女の方が先に知っているんですよね。それでも女は、どんなに苦しくても本音と建前をきちんとわきまえて、廓で商売をしていきます。

 それから、女からみた男の身勝手さが、否定するのではなく手の届かないものとして描かれています。勤皇・佐幕がばかばかしいと一面的に言うのではなくて、お園は、「あの人たちだって大変なのよ」と言って否定しません。岩亀楼の主人もいるし、お客もいる。お客の気持ちもわかるけど、主人の気持ちもわかる。その中庸をとった中でやっているんですね。

 攘夷党の連中が「あのころの華やかな攘夷党の時代終わった」と言います。政治的な建前で流れていく世の中は、その時代時代で終わっていく。しかし、建前ではない本音というのは変わらない・・・それでいて、有吉先生の独特な作風として、本音は変わらないから建前を否定するとも言わずに、建前は建前でやりましょうって(笑)。

 攘夷党の連中が、お園を納得させて帰るっていくところなんて、あれも建前ですよね。あの辺りが巧みに人間模様として描かれていて、それを暗い話にしないところが、やはり有吉先生が劇作家として素晴らしいところだと思います。

歌舞伎としての『ふるあめりか・・・』―――
 明治末期から大正・昭和にかけて、歌舞伎が古典演劇という枠に入り始めたころ、古典劇をなし崩しに現代劇にすることが出来なくて新派という演劇が生まれました。その新派に、泉鏡花先生や、三島由紀夫先生、北條秀司先生が作品を書いていきますが、これらの作品は大きく考えてみれば、歌舞伎や日本の演劇の流れから生まれたものだと思っています。

 歌舞伎にとって新作も大切ですが、こうしたつながりのある作品を、現代の歌舞伎俳優達が、歌舞伎の近代の作品として上演することも大切だと思っています。

 有吉先生は、お芝居の幕内を十分にご存知で、座付き作家的な作劇法というのをご存知でいらっしゃいました。そういう意味で、この『ふるあめりかに袖はぬらさじ』は歌舞伎になり得ると思っていますし、将来的には、先生の他の作品も歌舞伎俳優で上演できればと思っています。

印象的な場面―――
 岩亀楼のような水商売の場所では、昼間は、夜の支度をしています。そして、外が暮れてくると、中に明かりがついて、夜の世界に変わっていきます。とくに、三幕では、その移り変わりの雰囲気を上手く出して、お客様がそこに居ながら廓に入っていったように感じていただければと思っています。

 外の海の風景を大事にして、日が沈んで暮れなずんでいくと、お客さんがお酒を飲みに騒ぎながら入ってくる・・・このような雰囲気もなかなか舞台では出すことができないので、とても意識しました。

 このお芝居は、初めの行燈部屋を除いて、ほとんどこの一場です。その中でシュチュエーションが変わって物語が進んでいくというのは、やはり有吉先生の筆の素晴らしいところだと思います。

ふるあめりかに袖はぬらさじ

 豪華歌舞伎俳優の競演が大評判となった舞台を、まるで歌舞伎座の特等席に居るかのような美しさと迫力でご鑑賞いただけるシネマ歌舞伎『ふるあめりかに袖はぬらさじ』。ぜひお見逃しなく。

チケットは、東劇窓口、チケットWeb松竹、チケットぴあにてお求めください。全上映日程の先売り座席指定券(2,000円)をご購入いただけます。シニア割引き、レディースデイ等各種割引きはございませんので、御注意ください。

チケットWeb松竹
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:554-178)

2008年05月30日

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