歌舞伎の用語集

「聞いたことはあるけど、これってどういう意味なのだろう」、「見たことはあるけど、あれって何ていうのだろう?」。歌舞伎には独特の用語がたくさん出てきます!ここではそのなかからほんの一部をご紹介します。

あ行

  • あらごと荒事

    派手な扮装で荒々しく、ダイナミックな演技を行う、江戸で生まれた歌舞伎の代表的な演出のひとつ。

  • おおむこう大向こう

    上演中に、舞台から離れた後方の席より、「●●屋!」などと屋号をかける声や、それを行う人を指す。

  • おんながた女方

    歌舞伎に登場する女性役のこと。女性役を演じる俳優のことも指す。男性役のことを立役(たちやく)という。

か行

  • かおみせ顔見世

    俳優が芝居小屋と1年ごとに契約を結んでいた江戸時代、1年の始まりの興行では、俳優のお披露目をする「顔見世」が行われていた。現在は、1年ごとに契約するスタイルではないが、名称としての「顔見世」は伝統として残っており、11月に行われる歌舞伎座の「吉例顔見世大歌舞伎」、12月に行われる南座の「吉例顔見世興行」などが代表である。

  • くまどり隈取

    歌舞伎の特徴的な化粧法。筋肉や血管の隆起を表しているといわれている。

  • ケレン

    観客を驚かすような、奇抜な演出を指す。「宙乗り」「早替り」「本水」などが代表的なもの。漢字では「外連」と書く。

  • こうじょう口上

    俳優が、舞台の上から、お客様に向かってするあいさつのこと。さまざまな種類があるが、襲名披露や初舞台、追善興行などで行われることが多い。

  • こうけん後見

    俳優の影のように動き、演技が滞りなく進むよう、補助する役。例えば、小道具の受け渡しや、衣裳を替える手伝い、差金の操作などを行う。

  • くろご黒衣

    後見の一種で、黒色の衣裳で身を包み、俳優の演技を助ける役、もしくはその着ている衣裳を指す。歌舞伎で「黒は見えない」という約束事に従って、黒色の衣裳を着ている。ただ、海や川、水中などの場面や、雪の場面では、黒が目立ってしまうため、それぞれ青色の「水衣(みずご)」「浪衣(なみご)」、白色の「雪衣(ゆきご)」などを着る。

さ行

  • さじき桟敷

    東京の歌舞伎座、新橋演舞場、京都の南座などにある舞台に向かわず客席の方を向いた席のこと。他の座席に比べ一段高いところに位置し、掘りごたつ式でゆったりと観劇できる。

  • さしがね差金

    歌舞伎独特の小道具のひとつ。『鏡獅子』では、竹棒の先に蝶をつけて、獅子のまわりを蝶が飛ぶ姿を表現する。蝶のほかにも、鳥、人魂を表す焼酎火など、飛んでいる様子を表現するのに使用する。

  • しゅうめい襲名

    俳優が名前を継ぐことを指す。歌舞伎では、俳優がある節目を迎えたときに、先祖や父兄、師匠が名のっていた名前、それぞれの家で受け継がれてきた名前を継いでいく。名前だけでなく、型なども受け継がれていくことが、歌舞伎の特徴である。

た行

  • たちまわり立廻り

    戦いやけんかの場面で行われる、格闘や、太刀打ちを立廻りと呼ぶ。大人数による大立廻りでは、『蘭平物狂』のように、大梯子を用いたものもあり、圧巻である。

  • たちやく立役

    歌舞伎に登場する、男性役のこと。女性役のことを女方(おんながた)という。男性役を演じる俳優のことも指す。

  • ちゅうのり宙乗り

    江戸時代からある演出技法で、現代では、ワイヤーロープを使って俳優が客席上や、舞台上の宙を飛ぶ。演目によっては、舞台から上層階の座席後方まで俳優が飛んでいくこともある。

  • つらね連ね

    七五調で連ねられる長いせりふのこと。主に荒事の主人公が述べる長いせりふを指すが、『白浪五人男』のように、「連ね」を変形し何人かで分担するケースもある。これを「渡りぜりふ」という。

  • とおみ遠見

    2つの意味があり、ひとつは遠方にある景色を舞台の背景に描いたもの。もうひとつは、登場人物と同じ扮装をした子役が登場することで、その人物がまるで遠くにいるかのように見せる演出技法。この際に、ひと回り小さい馬を用意することもある。

な行

  • ならく奈落

    花道を含めた舞台の床下部分を指す。セリなどの舞台機構が設置されており、通路や物置き、大道具などの製作場所に使用されることもある。昔は非常に環境の悪い空間であったため、地獄のような場所という意味で、この名称がついたとされる。

  • にんぎょうぶり人形振

    義太夫狂言や舞踊などで使われる演出法のひとつで、俳優が、人形浄瑠璃の人形の動きを模して演じることをいう。

は行

  • はやがわり早替り

    俳優が、一つの場面もしくは連続する場面のなかで、ごく短い時間で衣裳などの見た目を変えて現れ、まったく異なる複数の役柄を演じ分けること。

  • ひきぬき引抜き

    舞台の上で、演技中に一瞬で衣裳を変える演出で、複数の型がある。あらかじめ衣裳を重ねて着用し、糸で粗く綴じておく。タイミングに合わせてその糸を引き抜き、外側の衣裳をはぐと、内側に着ている衣裳が現れるという仕掛けになっている。

  • ひっこみ引込み

    俳優が舞台に登場することを意味する「出(で)」または「出端(では)」に対し、退場することをいう。特に花道を使った退場を指すことが多く、そのなかには一度幕を閉めたあとに、花道に残った俳優が演技を続け、印象的に去っていく「幕外(まくそと)」という演出もある。

  • ひとまくみ一幕見

    一つの公演の全幕ではなく、一幕だけを観ること、またはそのための客席。比較的安価に、観たい幕だけを楽しむことができる。

  • ほんみず本水

    舞台上で本物の水を使う演出、もしくはその水を指す。

ま行

  • まねきかんばんまねき看板

    江戸時代から用いられていた宣伝手法のひとつで、名称には大勢の客を「招く」という意味が込められている。上部が屋根の形をした看板に、俳優の紋と名前を記したものを劇場の正面に掲げる。現在は、京都の南座において毎年行われる、「吉例顔見世興行」で掲げられるものが有名である。

  • みえ見得

    荒事から始まったという演技方法のひとつで、物語の山場や幕切れ、登場人物の気持ちが盛り上がる場面において、動きを一瞬止めて印象的なポーズをとることをいう。作品によってさまざまな種類がある。

や行

  • やごう屋号

    江戸時代の俳優が商人にならって屋号を使うようになったのが始まりといわれているが、今ではスター性を象徴する称号であり敬称ともなっている。

ら行

  • ろっぽう六方

    歌舞伎の演出のひとつで、花道から俳優が引っ込む際によくみられる。さまざまな型があるが、最も有名なのは『勧進帳』の「飛び六方」で、弁慶が主君である義経を急ぎ追いかける様子を、全身を使ってダイナミックに表現する。

わ行

  • わごと和事

    やさ男による色恋沙汰を、やわらかく、情感豊かに演じてみせる、上方で生まれた歌舞伎の代表的な演出のひとつ。