海老蔵「松竹大歌舞伎ロンドン・東京・京都 3都市公演」への想い

海老蔵「松竹大歌舞伎ロンドン・東京・京都 3都市公演」への想い

 2010年6月、演劇の都ロンドンにて「松竹大歌舞伎ロンドン公演」が開催され、2006年イギリスのローレンス・オリビエ賞にノミネートされた市川海老蔵が、古典歌舞伎の傑作『義経千本桜』に挑みます。帰国後には、ロンドン公演の興奮を日本の皆様へお届けすべく、8月東京(新橋演舞場)、9月京都(南座)でも公演を予定。話題の公演を前に、市川海老蔵が舞台への想いを語りました。

 待ち望んでいた公演を、サドラーズ・ウェルズ劇場で行えますことをとても嬉しく思っています。前回のロンドン公演は、より大きな責任のある立場で臨んだ海外公演でしたので、「また来てほしい」と声を掛けていただいた事に非常に胸が熱くなった事を覚えています。その時ぜひこの劇場で勤めたいと思った「四の切(川連法眼館)」を上演させていただきます。今回は「鳥居前」「吉野山」を通しで上演できるので、狐忠信の親に対する気持ちもロンドンの方にきっと伝えられると思いますし、海外の方も楽しんでいただけるような演出をこれから考えたいと思っています。

 「鳥居前」では荒事を、「吉野山」では舞踊を、「四の切」ではエンターテイメント性の強い古典を楽しんでいただきたいと思っています。私は、親と子が思い合う気持ちが"狐"という動物の世界を通す事でさらに素直に表現できるのではないかと考えています。人が動物に例えられる事で、親に対する真っ直ぐな気持ち、一言では言えない愛おしさ、感謝、辛さ、喜びが凝縮され、観客に伝わり物語にも入りやすくなります。親に対する真っ直ぐな愛というものがロンドンの方々に感じていただけるように願っています。

 サドラーズ劇場は毎月各国から様々なアーティストが集まってくる、柔軟性に長けたとても演じやすい劇場です。お客様も若い方がとても多く食い入るようにしっかりと見てくださいます。海外の同世代の方々に見ていただける事はとても喜ばしい事です。

 海外では「海老蔵って誰だ、歌舞伎ってどんなものなんだ」と思って観劇に来られる方がとても多く、ある意味で非常に心細い環境でもあります。そこで座頭である私をスタッフの皆さんが愛情を持って支えてくれて、共に舞台を創っている、そういう事を強く体感できたのが前回のロンドン公演でした。それが『雷神不動北山櫻』というものにも繋がっていったのだと思っています。あの時の喜びをいつも心に持ちならがら舞台を勤めたいと思っています。

海老蔵「松竹大歌舞伎ロンドン・東京・京都 3都市公演」への想い

2010/03/29