海老蔵 9月京都・南座 九月大歌舞伎 訪欧凱旋公演「通し狂言 義経千本桜」への想い

海老蔵 9月京都南座「九月大歌舞伎 訪欧凱旋公演 通し狂言義経千本桜」への想い

 9月京都・南座では、九月大歌舞伎 訪欧凱旋公演 「通し狂言 義経千本桜」が上演されます。忠信・知盛・権太の三役、そして宙乗り狐六法を勤める市川海老蔵が公演での意気込みを語りました。

 今回が2度目となるロンドン公演でしたが、前回と同じスタッフが多数集まってくれたおかげで、以前の良かった点を残し、悪かった点は修正することが比較的スムーズにできました。こうした積み重ねがあることで、自然にロンドンという場所に入って行けたことは僕にとってとても大きな事でした。また、公演がワールドカップの期間と重なり、ヨーロッパの方はあまり観にいらっしゃらないのではという思いもありましがた、実際はとても大きな関心を持っていただきました。近年、海外での公演を数多く経験したことで、歌舞伎を観てみようと思ってくださる海外の方が増えているのだと思います。改めて積み重ねていくことの大切さというものを実感しました。

 海外公演ではケレン味あふれる『四ノ切(川連法眼館)』が面白いと言ってくださる方はもちろん多かったのですが、『吉野山(道行初音旅)』が美しいと評判でした。中には『吉野山』で全てのプログラムが終わったとお客様が勘違いされてしまうくらい、とても良い反応をいただいた日もあったくらいです。「義経千本桜」の『鳥居前』は荒事、『吉野山』は舞踊、『四ノ切』はケレン味、それぞれに歌舞伎の要素がたくさん含まれています。多くの方が純粋な気持ちでご覧になっているのを舞台で感じ、歌舞伎の力、「義経千本桜」という狂言の持つ強さを改めて感じました。

 南座では「義経千本桜」を通しで上演します。『鳥居前』『渡海屋・大物浦』『吉野山』『木の実・すし屋』『四ノ切』どれをとっても大変な演目です。以前父に教えていただいたとおり、丁寧に勤めたいと思っています。さらに南座では『蔵王堂』も出ますので、そちらもぜひお客様にも楽しんでいただきたいと思っています。

 忠信・知盛・権太という大役を32歳の自分が通しで勤めさせていただけることを本当にありがたいと思っています。今だからこそ出来ること、そして次に繋がる事を考えながら一所懸命に勤めたいと思っています。

2010/08/09