坂東薪車 6月大阪松竹座『夢物語 華の道頓堀』への意気込みを語りました

薪車6月大阪松竹座『夢物語 華の道頓堀』への意気込みを語りました

 大阪松竹座では6月5日(日)から28日(火)まで『夢物語 華の道頓堀』を上演します。芝居小屋がひしめく懐かしの道頓堀を舞台に、旅館の仲居と歌舞伎役者の二人を中心に、笑いあり、涙ありの人情物語。関西を代表する喜劇役者・藤山直美と、歌舞伎役者・坂東薪車が、大阪松竹座「なおみまつり」の『銀のかんざし』、南座『春風物語~恋の呂昇~』に続いて、3度目の共演を果たします。公演に先立ち、藤山直美、坂東薪車、脚本の佐々木渚が舞台への意気込みを語りました。

脚本・佐々木渚
 藤山直美さんと坂東薪車さんは、今回3度目の共演です。昔の芝居町、道頓堀五座の櫓や幟が立ち並ぶ、そういった大阪の風情の中で、今までお二人が共演されてきました役とまたちょっと違うキャラクターで二人の恋模様をご覧頂きたいと思っています。

 直美さんが演じられる妙という女性は、過去に自分の大切な子どもを亡くしています。それ以来、妙さんの性格や行動、人生を選ぶ時においてもその事が深く影響を及ぼします。そして様々なものを諦めた妙さんが、薪車さん演じる歌舞伎役者と出会って、人生の中に凄くささやかな夢を見つけ、表に立つことなく自分の夢を叶えていこうとします。そうした、どちらかといえば控えめな女性を直美さんに演じていただけたらなと思い、書かせていただきました。


藤山直美
藤山直美 五座の櫓の立ち並ぶ道頓堀に、当時一番の娯楽であるお芝居を楽しみに足を運ぼうという古き良き時代。その時代の大阪を懐かしみ、楽しみ、何か共感を得ていただいて心が和んでいただければと思います。子どもを亡くした母親、その母性の行き場を妙は扇之助(薪車)に持っていったんだと思います。だから扇之助さんの役に立ちたい、妙の夢は扇之助さんの夢が叶うこと、そういった溢れるような母性を持っているわけです。難しいお役ですけれど、今回は新作で全員が初役ですから、ここからが出発点。出てきた姿でいいのとちがうかなって(笑)。そういうふうに感じています。

 大阪のお芝居を大阪で演じるのは実は難しいです。大阪で『桂春団治』をする時ってなんとなく緊張するんですよね。でも、こういう時こそ、役者が真剣に、一期一会、毎日手を抜くことなく、お客さんに喜んでいただきたいって思う心を持てるかどうかが大切だと思うんです。

 私にとって歌舞伎役者さんと一緒にお芝居ができるというのは、凄く嬉しい事です。薪車さんは上方歌舞伎に命を賭けてこられた坂東竹三郎師匠の芸養子でいらっしゃいますから、本当に芸を叩き込まれていらっしゃいます。私は父親が喜劇に命を賭けてきた人ですから、私達が共演することで、上方歌舞伎と上方喜劇が凄く良いところで融合されて、上方ならではのお芝居ができると思っております。


坂東薪車
坂東薪車 昨年4月南座の『春風物語~恋の呂昇~』では人形遣いを勤めましたが今回は歌舞伎役者、どちらも芸道者ですが、やはり歌舞伎役者となりますと、ある意味で歌舞伎役者としての真価が問われるような役だと思っています。日々一所懸命お稽古をして良い舞台になるように勤め、皆様に感動していただき、笑っていただき、楽しんでいただきたいと思っております。

 私の勤める扇之助は、とても自分に近い人物で、今まで演じてきた役や、生きてきた人生を大いに反映させていこうと思っています。役者ってこうなの?と悪い意味で取られてしまわないように、このお芝居に限っては、歌舞伎役者の代表で出るという強い決意を持って挑みたいと思っております。そして歌舞伎をよくご覧になっているお客様には、歌舞伎の裏の世界ってこうなのかなと想像していただくことも、このお芝居の楽しみの一つだと思っております。

 劇中劇で『二人椀久』をアレンジした舞踊を勤めさせていただきます。『二人椀久』は役者にとって憧れの舞踊であり、こういう機会をいただけて心から嬉しく思っています。しかし、これもまた歌舞伎役者としてしっかりと勤めなくてはいけない、そういう意味でも、大きく自分にプレッシャーをかけていきたいと思っております。

2011/05/07