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怪魚の秘密――『椿説弓張月』小道具の工夫

kaigyo_04.jpg 荒波を泳ぎ回り、舜天丸(すてまる)と紀平治、二人を乗せて浮かび上がる怪魚。『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』中盤のスペクタクルに登場する怪魚は、全長5.6m、幅1.2m、人が乗る位置の高さは2.1mという大きさですが、大道具ではなく、実は小道具が担当しています。実際の作業に約1か月かかったという、"大作"の怪魚の工夫を聞いてきました。

胴がうねる! 尾が左右に振れる!――

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 可動部分の骨組みは竹。時代は変わっても、「竹のしなやかさ、戻りなどはほかに代えられない」のだとか。

 二人の役者を乗せながら、怪魚の中には、頭と胸びれの担当と、その他の動きを制御するもう一人が入ります。そのたった二人が、怪魚の複雑な動きを見せてくれます。「胴は上下に、尾は左右に動くようにという注文に、どう応えるか悩みました」と言うのは、藤浪小道具株式会社の主任、長谷川浩司さん。思いあぐねていたところ、はたと気づいたのがリヤカー。シンプルな構造にすることで問題が解決したそうです。

 今回は、製作スタッフや俳優の意向を聞き、「指定された北斎の錦絵を参考に」長谷川さんがイメージを絵に起こし、設計担当の小林知樹さんが図面に落とし込みました。最初に1/10の模型をつくり、作業にかかりましたが、「金工、工芸、木工、竹芸...、藤浪小道具の各部門が総出で一つの小道具をつくったのも、まずないこと」だったそうで、まさに小道具の総力を結集した怪魚となったわけです。

リアルすぎても歌舞伎らしくない――

 骨組みをつくり、発泡スチロールを造形し、布を張り、色を塗る。頭部のスチロールはやすりをかければ滑らかになりますが、「あえて彫刻刀の跡を残すように削りました」と小林さん。さらに、布を貼ってから彩色しています。

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 眼は仏像をイメージしてアクリル半球で小林さんが作製。長谷川さんが「歴代の怪魚で一番のこだわりを感じる」と言う、眼の周りの模様を描きます。

 滑らかに成形して直に彩色すれば、よりリアルに見えるかもしれませんが、「それは歌舞伎らしくないし、客席から見たときに迫力がなくなる」と長谷川さんが言うとおり、舞台の小道具は客席から見たときの効果が、最も大切なポイントです。そこで、舞台稽古の前に行われる「道具調べ」で、実際に舞台に置いて照明を当て、客席から見た効果をチェックします。もちろん、ここで修正依頼が来ることも!


こだわりが歌舞伎らしさをつくる――

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 怪魚のうろこは、あえて昔ながらの描き方にしています。しかし、「背身より腹身は脂が多いから」と、縁取りを背側は銀色、腹側は金色にする工夫を加えたのは小林さんです。長谷川さんは「いかに浪布に映える色にするか」にこだわったと言います。しかも、たとえ修正依頼が来てつや出しをかけたとしても、こだわりの色味が損なわれない色にと・・・。

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 作業の後半はほとんど屋外で。「俯瞰で見ながら作業を進められたのがよかった」とのこと。 

 リアルを追及するのではない、でも、細部や微妙なこだわりの積み重ねこそが、客席から見たときの効果につながる――。小道具さんに受け継がれてきた伝統の技術と新たな工夫が、果たして客席からはどんな効果となって見えるのか!? 

 ぜひ、5月の新橋演舞場『椿説弓張月』の舞台でお確かめください!


 『椿説弓張月』予告編動画でも、怪魚の活躍の一部をご覧いただけます。

2012年05月02日

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