出演者が語る坂東玉三郎特別公演『日本橋』

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12月3日(月)~26日(水)、東京 日生劇場 「坂東玉三郎特別公演『日本橋』」の上演にあたり、出演・演出の玉三郎と、共演者ら(写真右より永島、高橋、玉三郎、松田、斎藤)が公演への思いを語りました。

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25年ぶりのお孝
 昭和53(1978)年3月新橋演舞場で初めて演じ、今回は62(1987)年2月新橋演舞場以来、5度目のお孝となる玉三郎。25年ぶりに演じることについては、「前回、ご覧になった方が、鏡花の芝居の本質は変わらないのに、新しいものを見たという喜びをもってもらえれば。花柳界を借りて描かれる人間の煩悩、理想を、突き詰めた作品として楽しんでいただきたい」と語りました。

 また、20代から新派の勉強を続けてきて、「先代の(水谷)八重子先生に、自分で(お孝という役を)編み出しなさいと言われたことが印象深い」と言い、歴史ある新派の女方芸の継承に向け、「今までの経験を土台にして」お孝を演じると述べました。

「身が引き締まる思い」――玉三郎の共演者
 清葉役の高橋惠子が「女優人生において最高のステージ」と言えば、『ふるあめりかに袖はぬらさじ』に続いて再び玉三郎の抜擢を受けた松田悟志は「身のやせ細る思い」、鼓童を離れてから初の舞台出演となる斎藤菜月は「(出演依頼の)電話を間違いだと思った」、映画『ナスターシャ』(1994)でも共演している永島敏行は「身が引き締まる思い」と、それぞれに玉三郎と共演する舞台への緊張感と期待を率直に話しました。

 昨年1月三越劇場以来、2度目の清葉を演じる高橋は、「劇中に登場する人形と清葉が重なりますが、生身の人間としての葛藤が出せればと思います。初めて白塗りを勉強させていただくのですが、白塗りは人形のように扱われている女性という意味でも大切なのでは」と語りました。また、その清葉に思いを寄せる葛木晋三という役を「完成された大人の人格」ととらえた松田は、「臆することなく、堂々と役と向き合いたい」と意気込みを語りました。

 お孝が葛木と馴染みになっても、お孝を諦めない男、五十嵐伝吾役は永島。「お孝に惚れまくり、家族も捨てて人生をかける男...。実人生でできないことを舞台で楽しみたい(笑)。心の奥底の欲望をさらけ出せれば」。お孝に寄り添うお千世役については、「鏡花のヒロインとして、観る人が思い入れのできる固定イメージのない人」として斎藤を抜擢した玉三郎が、「純粋な、自意識のない半玉として、舞台で立ち上がってくれれば」と、期待を寄せました。

日生劇場に合う『日本橋』を
 「抽象的な空間として表現したい。たとえば、生理学教室などは深淵な、人間の奥深い、計り知れない空間として存在させ、そこで鏡花の人物が演じられれば」。玉三郎が思い描くのは、新派作品とはまた一つ違う、日生劇場でしか表現できない「抽象的」な要素が強く現れる舞台のようです。

 そのような空間で、「大正のにおいや雰囲気を役者がどう出せるか。情熱的でおせっかいで、わずらわしい人間関係が、人との大切なつながりになるというテーマをどう打ち出せるか」と永島。玉三郎も「花柳界という写実なものの裏側に、鏡花先生のお書きになった幻想的な世界がうす暗くある舞台に」と、作品のイメージがどんどん膨らんでいるようでした。

 秋から年末にかけ、『ふるあめりかに袖はぬらさじ』に続く、玉三郎の近代日本の戯曲の上演。チケット発売 は9月20日(木)からです。

2012/09/18