我當が語る「上方歌舞伎鑑賞会」

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 6月23(日)~27日(木)、大阪松竹座 「上方歌舞伎鑑賞会~名作歌舞伎の舞台と映画史に残る貴重な映像が織り成す極上の時間(ひととき)~」に出演する片岡我當が、十三世片岡仁左衛門生誕110年となる今年の公演について、特別の思いを語りました。

上方歌舞伎に尽くした十三世仁左衛門
 我當、秀太郎、仁左衛門の父である十三世仁左衛門は、明治36(1903)年生まれ。90歳で亡くなってからすでに20年近く経ちますが、「一度も父の舞台を見ていない人が、この映画を観てファンになったと聞くと、涙が出るほどうれしい」と我當の言う映画が、『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』です。全編上映時間が10時間を超えるこの長編から今回は、若手を指導する姿を追った「若鮎の巻」と、84歳から88歳までを公私にわたり記録した「人と芸の巻 上・中・下」が、日替りで上映されます。

 「いい時こそ安心せず、悪い時以上に頑張れ」「一に稽古、二に稽古」が父の教えだったと言う我當は、十三世の上方歌舞伎に対する熱い思いをしっかり受継ぎ、若い中高生に歌舞伎を知ってもらおうと十三世が始めた「歌舞伎鑑賞教室」や上方の若手の勉強会である「上方歌舞伎会」などで、上方歌舞伎の隆盛に尽力しています。今年の「上方歌舞伎会」では『車引』梅王丸の指導に当たりますが、これも「七代目三津五郎、二代目松緑、お二人の梅王丸を継承させるため」とのこと。

 「父は愛に満ち満ちた人。思い出すたびに目頭が熱くなります」と語る我當が、公演の最初に「御挨拶」として、舞台や家での十三世の思い出の数々を話す予定です。

父の当り役を受継ぐ
 芝居で我當が演じるのは、十三世の当り役の一つである『新口村』の孫右衛門。「心情がわかる気がして胸がいっぱいになるけれど、泣きすぎてはいけない。悲しみを抑えることで共感を呼ぶのだと思います。溶け込みやすい役ですね」。十三世は忠兵衛と孫右衛門を早替りで見せ、遠見で進之介と孝太郎が出たこともあります(昭和50年8月南座)が、「遠見のほうにお客様の目がいって舞台が散漫になるので、私は遠見ではやりません」。

 さらに我當は、現代のお客様に合わせ、「"老足(ろうそく)の"と言うとキャンドルを思い出されるので"老いの足"としたり、"久離(きゅうり)切った親子"は"縁を切った親子"とわかりやすいように」、独自に工夫を重ねています。

 「自然体で演じる、それが父の教えでしたが、父が亡くなり、自分が年をとってようやくわかってきたように思います」。だからこそ、演じる回数を重ねるたび、「よけいに難しい。前回よりも1ミリでもよくしたいと思いますから」と語りました。

  「上方歌舞伎鑑賞会」は6月23日(日)~27日(木)までの公演、チケットはチケットWeb松竹チケットホン松竹ほかで好評販売中です。

2013/06/11