松緑、菊之助が語る「三月花形歌舞伎」

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 3月2日(日)~26日(水)、京都四條南座 「三月花形歌舞伎」公演を前に、出演の尾上松緑、尾上菊之助がそれぞれの出演演目について語りました。

尾上松緑

きっちり勤める――『素襖落』
 昼の部は若手3人の『吹雪峠』で幕開け。「12月の顔見世ではなかなか見られない演目もあり、顔見世とはまた違った趣きが出せればいいなと」、今回の花形歌舞伎について語った松緑。続く『素襖落』については「行儀が大切。那須与一の『扇の的』をなによりもきっちりと踊り、狂言もきっちりと勤める。初役だからきっちりしすぎているのかなというくらいに勤めることで、お客様に喜んでいただけると思います」。

 「自分としては踊りをよりいっそう磨き上げていきたい。そのために一生つきあっていく演目」と語り、狂言物だからとわざと笑わせるようなことはせず、真正面からぶつかって行儀よく勤めることを明言した松緑。そこには、七世幸四郎、六世菊五郎、二世松緑、そして父(三世松緑)が手がけてきたゆかりの演目への、特別な思いが表れていました。

若旦那の風情を残して――『与話情浮名横櫛』

尾上菊之助

 すでにお富を演じている菊之助は今回、いよいよ与三郎に初挑戦となります。「『見染』での江戸の若旦那の風情と、『源氏店』でゆすりに行ってもその風情が残っていることが大切なのではないかと想像しています」。特に「源氏店」では、家へ入って最初のせりふを言うまでのところが、「やることがない分、難しいのではないか」と言いつつ、何度も与三郎を手がけている父、菊五郎に聞いて「父が感じてきた与三郎を体現できれば」と意欲的に語りました。

 公演中、二人が共演するのはこの演目だけで、松緑は鳶頭の金五郎役を楽しみにしているそうです。祖父も父もやったことがないのではという「見染」で、「明るく、客席を回るところもお客様に喜んでいただけるようにやりたい。私は、この公演は昼夜でお客様をリラックスさせる役が続くので、ほんわかした気分で観ていただければ」と笑顔を見せました。

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  『御摂勧進帳』尾上松緑

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  『京鹿子娘道成寺』尾上菊之助

 
 


おおらかに、明るく――『御摂勧進帳』

 歌舞伎十八番の『暫』『勧進帳』のパロディーともいえる演目で、荒事の二役は体力的にもつらいものですが、松緑は「全力投球では観ていても疲れます。緩急をつけてお客様にはうきうきして観ていただきたい」と話し、今回は祖父の二世松緑のやり方に近づけると語りました。

 十二世團十郎に、荒事は稚気で見せるものだが、子どもに帰るのではなく大人の童心が必要と言われたことがあるとのことで、「話のつじつまや矛盾を超越したおおらかさで、お客様に笑って喜んでいただく、いい意味で何も考えずにご覧いただくエンタテインメント性のある芝居です」。

お客様と景色を共有――『京鹿子娘道成寺』
 3回目の花子を踊る菊之助は、祖父の七世梅幸が数えきれないほど演じており、役への思いもひとしおですが、「女方の大曲で、踊り込むとテクニックやペース配分などは体に馴染んでくるのでしょうけれど、根本は娘らしさを忘れないこと、そして、鐘への思い」と、きっぱり。

 「舞踊は、お客様がご覧になっている景色と、演者が描いている景色が一致するのが一番と考えています。今回は、歌詞に込められた思い、花子が込めた思いをどれだけお客様に感じていただけるかを大事に挑戦していきたいですね」。『二人道成寺』の経験が自分の大きな財産になっているとのことで、さらなる高みを目指して明確な目標を掲げました。

 二人が中心となり、後輩の若手俳優が重要な役を演じる「三月花形歌舞伎」。菊之助は「桜を待つ、ちょっとそわそわした気分、明るい季節の公演です」と、満開の花を前に気持ちの浮き立つ季節にかけて、この若さあふれる公演をアピールしました。

 京都四條南座 「三月花形歌舞伎」のチケットは、2月15日(土)より チケットWeb松竹チケットホン松竹にて販売です。

2014/01/26