染五郎が語る「明治座花形歌舞伎」

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 5月2日(金)~26日(月)、「明治座 五月花形歌舞伎」で昼夜にわたり出演する市川染五郎が、公演についての意気込みを語りました。

すべて初役で
 「古典の重厚さ、力強さを感じていただける『鳥居前』」で幕を開ける「明治座 五月花形歌舞伎」。この一幕が終わった後、染五郎は舞台に出ずっぱりとなります。「踊りの楽しさがわかる松羽目舞踊の『釣女』」では初役の太郎冠者。そして、平成5(1993)年8月国立劇場「第五回 宗十郎の会」で観て以来、「こういう芝居ができたらいいな」と思い続けていたと言う『艪清の夢(ろせいのゆめ)』に出演します。

 「楽しく、面白く、笑える芝居。(九世澤村)宗十郎のおじ様がやっていらしたような古風な歌舞伎の味が出せれば」と、今回は残されていた宗十郎の衣裳をつけて清吉役に挑みます。宗十郎に数々の役を教わっていたある日、「前のめりに集中するのではなく、ゆったり座って観るのが歌舞伎」と言われ、自分にそういう考えがなかったことに驚いて「それが歌舞伎のおおらかさ、古風さにつながるのかな」と感じていたそうです。

染五郎が語る「明治座花形歌舞伎」

新作歌舞伎としての最高傑作
 夜の部は、七世市川團十郎の初演以来、評判をとったにもかかわらず、長く上演が途絶えていた『伊達の十役』。残る資料も少ないなか、猿翁(当時、猿之助)が脚本の奈河彰輔、振付、演出の藤間勘十郎(六世=二世勘祖)らとともに、ほぼ新作のようにしてつくり上げたのが昭和54(1979)年4月のことでした。明治座でのこの上演が大評判となり、急遽、7月歌舞伎座でも再演され、猿翁はこれまでに計9回上演しています。

 「猿翁のおじ様にはご自身がつくられた作品を、いろんな人にやってもらいたいという思いがおありのようで...」、猿翁に会うたび「『伊達の十役』をやりなさい」と言われることが幸せで、満足を感じていたという染五郎。上演が途絶えることを心苦しく思い、本作での「政岡をやることを目標に女方の役をやっていました」と明かしました。それだけに、今回の上演は「感無量。話としてわかりやすく、芝居として面白く、なおかつ十役早替りの趣向がある。新作歌舞伎として最高傑作だと思っているので、そのエネルギーを感じ、傑作を体現したい」と、目を輝かせました。

 「早替りの作品ではなく、この芝居は政岡の芝居と言われますが、そのとおりだと思います」。しかしながら、脚本、演出、衣裳から鬘まで、「すべてがこの作品のためにつくられた役なので、ほかの芝居でやったことを入れるとバランスが崩れる」とも言い、たとえ政岡といえども『伽羅先代萩』の政岡としてではなく、「『伊達の十役』の10役として、一つひとつを体現する」とのこと。そうすることで自然とその役になるのではないかと語りました。

 「若い一座なので、一日一日、100%出し切るひと月を目指しています」。念願だった猿翁と九世宗十郎の作品を演じる喜びとは別に、20代の若手が数多く出演する公演を引っ張る立場として、「千穐楽まで、あれをやろう、こう変えてみようと続く、それも一つの形かなと思って」、次につながる公演にすべく、"奮闘"の5月を迎えます。

 「明治座 五月花形歌舞伎」のチケットは、3月30日(日)より販売開始。チケットWeb松竹チケットホン松竹のほか、明治座チケットセンター、およびインターネット予約でも販売します。

2014/03/27